研究成果

多発性硬化症の新たな病態増悪機構を解明 -TRPM2を介したケモカイン産生が神経炎症の増悪に至る好中球の浸潤を引き起こす-


2018年09月13日


     白川久志 薬学研究科准教授、金子周司 同教授、筒井真人 薬学部生(現・日本たばこ産業 研究員)、平瀬僚 同学部生(現・マルホ株式会社 研究員)、宮村咲映 同学部生らの研究グループは、多発性硬化症における新たな神経炎症および脱髄の発生・増悪メカニズムを解明しました。

     本研究成果は、2018年9月11日に、国際学術誌「Journal of Neuroscience」に掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、白川准教授、筒井氏、平瀬氏、宮村学部生

     多発性硬化症は、神経軸索の髄鞘が障害され、神経症状の再発や寛解を繰り返す、厚生労働省による指定難病の一種です。今回の発見により、マクロファージに発現する活性酸素種感受性イオンチャネルであるTRPM2の活性化が、ケモカインCXCL2を産生し、その後の好中球浸潤による神経炎症・脱髄を悪化させるという、病態増悪に関与する新たな機能分子と新たな細胞群が明らかになりました。今後はこのような疾患メカニズムと中枢神経系に常在する細胞との関連性に着目して、神経炎症・脱髄の発生/増悪メカニズムのさらなる解明を目指して検討する予定です。

    概要

     多発性硬化症は、運動麻痺や感覚障害、視力障害、排尿/排便機能障害、精神症状などの様々な神経症状が現れる難治性の神経疾患です。詳細な原因は分かっていないものの、神経細胞の軸索を覆っている髄鞘(ミエリン鞘)がリンパ球の攻撃により障害を受けることで発症する脱髄性の自己免疫疾患と考えられています。

     本研究グループは、マウスを使って多発性硬化症の病態モデルを作成し、神経炎症および脱髄の発生・増悪メカニズムを調べたところ、中枢神経系の神経炎症・脱髄部位にマクロファージが集まっており、ケモカイン(白血球走化性因子)であるCXCL2を過剰に産生して好中球をその部位に大量に呼び寄せることで、さらなる神経炎症の増悪を引き起こしていることを見出しました。また、そのマクロファージに発現する活性酸素種感受性のCa2+透過性陽イオンチャネルであるTRPM2(トリップエム2)を抑制すると、その増悪が抑えられることを明らかにしました。

     本研究成果により、活性酸素種感受性チャネルであるTRPM2の阻害や、マクロファージによる好中球浸潤の抑制が、多発性硬化症の新たな治療法の開発につながることが期待されます。

     

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】
    https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.2203-17.2018

    Masato Tsutsui, Ryo Hirase, Sakie Miyamura, Kazuki Nagayasu, Takayuki Nakagawa, Yasuo Mori, Hisashi Shirakawa and Shuji Kaneko (2018). TRPM2 exacerbates central nervous system inflammation in experimental autoimmune encephalomyelitis by increasing production of CXCL2 chemokines. The Journal of Neuroscience, 2203-17.


    多発性硬化症の新たな病態増悪機構を解明 -TRPM2を介したケモカイン産生が神経炎症の増悪に至る好中球の浸潤を引き起こす-
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