研究成果

アクチン繊維のわずかな偏りが脳神経細胞の形を決めることを発見しました


2018年07月17日


     見学美根子 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)教授、川端 Galbraith ケリー 同研究員、渡邊直樹 生命科学研究科教授、三品昌美 東京大学教授(現・立命館大学教授)らの研究グループは、タンパク質「MTSS1」が、アクチン繊維構造のバランスをとる機能をもつことを発見し、神経細胞の微細形態のわずかなズレが突起全体の空間分布を変える機構を証明しました。

     本研究成果は、2018年7月4日に米国の科学誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、見学 教授、川端 研究員

     アクチンは細胞内で最も豊富な分子で、変幻自在に形を変えてさまざまな機能を果たします。脳においては記憶・学習にともなうシナプス結合の変化に必須であり、そのバランスの破綻はアルツハイマー病などの変性疾患に直結しますが、詳細な制御や動態はまだ不明です。今回用いたマルチスケールのライブ観察を駆使して、残された問題に取り組みたいと考えています。

    概要

     脳神経回路は、神経細胞の長く複雑に分岐した突起同士が連結して機能しています。そのため神経細胞の分岐パターンの異常は精神遅延や脳機能障害に直結します。

     本研究グループは、MTSS1というアクチンに結合する分子を欠損した遺伝子改変マウスにおいて、神経細胞の突起の数が減ってしまうことを見出しました。MTSS1はがん細胞の転移を制御する分子として既に知られていますが、本研究で脳の神経細胞の突起形成に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

     本研究成果は、神経回路形成の分子機構の理解を深め、神経変性疾患や脳損傷の治療法の開発につながるものです。またMTSS1の作用機序が明らかになったことで、がんの病態理解と治療法開発への道も期待されます。

    図:MTSS1遺伝子が欠損したニューロンでは、DAAM1が活性化し、アクチンがフィラメント状にのびる

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】
    https://doi.org/10.1016/j.celrep.2018.06.013

    【KURENAIアクセスURL】
    http://hdl.handle.net/2433/232641

    Kelly Kawabata Galbraith, Kazuto Fujishima, Hiroaki Mizuno, Sung-Jin Lee, Takeshi Uemura, Kenji Sakimura, Masayoshi Mishina, Naoki Watanabe, Mineko Kengaku (2018). MTSS1 Regulation of Actin-Nucleating Formin DAAM1 in Dendritic Filopodia Determines Final Dendritic Configuration of Purkinje Cells. Cell Reports, 24(1), 95-106.e9.


    アクチン繊維のわずかな偏りが脳神経細胞の形を決めることを発見しました
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