極大地震を想定した木造住宅の耐震シミュレーションソフト最新版を公開 -制振装置の検証や実務での活用がより身近に-

ターゲット
公開日

中川貴文 生存圏研究所准教授は、独自に開発したシミュレーション理論によって、木造住宅の地震時の損傷状況や倒壊過程を正確に検証できるプログラム「ウォールスタット(wallstat)」の最新版を公開しました。最新版では、制振装置の効果を検証できるようになった他、市販の設計ソフトの詳細な建物情報を直接読み込むことが可能となりました。研究者や技術者だけでなく、工務店や施主など幅広いユーザーに普及し、耐震性能の検証や防災意識の啓発などに活用されることが期待されます。

研究者からのコメント

中川 准教授

wallstatは、2010年12月にホームページ上で公開を開始してから、現在(2018年7月)まで20,000回以上のダウンロード数を記録しています。興味を持たれた方はぜひダウンロードして使っていただければと思います。ホームページ上では計算結果の倒壊過程のアニメーションも見ることができます。今後も利用される皆様のご意見・ご要望をお聞きして改良を加えて、さらなる実用性向上を目指したいと思います。wallstatを多くの方々に使ってもらうことで、木造住宅の耐震性に関する意識の向上、技術者や学生のレベルアップにつながることを期待しています。

概要

木造住宅の地震時の損傷状況や倒壊過程をシミュレートするプログラム「ウォールスタット(wallstat)」は、パソコン上で建物を3次元的にモデル化し、過去に起きた地震や想定される極大地震などさまざまな地震動を与え、木造住宅の耐震性能を動画で確認(見える化)することができます。建物が完全に倒壊するまでを計算できるのがこのソフトの特徴です。これまで、数多くの実大振動台実験の成果等を踏まえ、独自のシミュレーション理論の開発と検証を重ねてきました。

最新版では、3つの新たな機能が追加されました。まず、制振装置のモデル化機能として、地震の揺れを軽減する制振装置の効果を、市販の制振装置に幅広く対応する3つのモデルによって検証できるようになりました。次に、木造住宅用CADとの連携強化の面で、実務で使われている木造住宅用CAD(設計ソフト)の詳細な建物情報を直接読み込むことが可能となりました。そして、構造設計支援機能においては、プッシュオーバー解析(鉄筋コンクリート造や鋼構造のビル等の構造設計に用いられている計算方法)を簡単な操作で行うことが可能となりました。これにより、地震力等が作用した際の建物の壊れるまでの性能(終局性能)を評価できます。

これらの新たな機能によって、木造住宅に関わる様々な実務者が、より簡単な操作で高度な耐震シミュレーションを行うことができるようになりました。

詳しい研究内容について

書誌情報

  • 京都新聞(7月5日 26面)、日刊工業新聞(7月6日 29面)、毎日新聞(8月11日 27面)および読売新聞(7月27日 17面)に掲載されました。

関連リンク