研究成果

DNAを用いたチンパンジーの年齢推定に成功 -野生動物の生態解明研究に画期的な進歩-


2018年07月09日


     伊藤英之 野生動物研究センター特任研究員(兼・京都市動物園係長)、鵜殿俊史 同特任研究員、平田聡 同教授、村山美穂 同センター長らの研究グループは、チンパンジーについて、年齢によって変化するDNAのメチル化を検出することによって、これまで困難と考えられてきた年齢推定を可能にしました。

     本研究成果は、2018年7月3日に英国の科学誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

    研究者からのコメント

     野生動物を直接観察することは困難ですが、DNAから性別、個体識別、血縁関係など重要な情報が得られます。私はこれまで、それらの研究を行ってきました。ただし年齢の情報を知ることだけは、これまでDNAからは難しかったのです。寿命の長い哺乳類や鳥類では、大人になってしまえば、生きている状態で外見から年齢を推定するのは難しいのです。DNAから年齢推定ができれば、保全に必要な年齢構成の情報が得られるなど、野外での生態学的研究に画期的な進歩が期待できます。今後は、野外調査に役立てるため、糞を用いた解析条件を検討します。さらに鳥類でも大学院生と一緒に解析を進めています。(村山 センター長)

    概要

     本研究グループは、チンパンジーについて、DNAのメチル化を検出することによって、これまで困難と考えられてきた年齢推定を可能にしました。

     年齢の判明している飼育チンパンジー20試料(採取時の年齢2-39才)について、ヒトで年齢とメチル化の関連が報告されている遺伝子ELOVL2、CCDC102B、ZNF423のメチル化の割合を調べたところ、ELOVL2は年齢と正の有意な相関がありました。CCDC102BとZNF423は有意ではありませんでしたが、年齢と共に減少する傾向がみられました。これらの傾向は、ヒトに関する先行研究も一致していました。8個体の20年間の比較では、メチル化割合の増減に個体差が見られました。相関が低かったZNF423を除いて、ELOVL2とCCDC102Bの2遺伝子の5か所と年齢の相関係数は0.74と高く、誤差は5.4年でした。

     これらの遺伝子を指標として、ある程度の年齢推定が可能と考えられます。本研究のように対象個体の年齢や集団の年齢構成を推定することができれば、チンパンジーのような寿命の長い種において、その生態の解明に大きく貢献することが期待できます。

    写真:本研究で試料を提供したチンパンジーの一個体、アキナ

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】
    https://doi.org/10.1038/s41598-018-28318-9

    【KURENAIアクセスURL】
    http://hdl.handle.net/2433/232615

    Hideyuki Ito, Toshifumi Udono, Satoshi Hirata, Miho Inoue-Murayama (2018). Estimation of chimpanzee age based on DNA methylation. Scientific Reports, 8, 9998.

    • 京都新聞(7月4日 25面)、産経新聞(7月14日 23面)、中日新聞(7月26日夕刊 2面)、日本経済新聞(7月5日夕刊 10面)、毎日新聞(7月4日 24面)および読売新聞(7月4日夕刊 12面)に掲載されました。

    DNAを用いたチンパンジーの年齢推定に成功 -野生動物の生態解明研究に画期的な進歩-
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