研究成果

洞察瞑想時に自伝的記憶関連脳領域間の結合性が低下することを発見 -今この瞬間に生じている経験にありのままに気づくことの神経基盤-


2018年07月05日


     藤野正寛 教育学研究科博士課程学生、野村理朗 同准教授、上田祥行 こころの未来研究センター特定講師、水原啓暁 情報学研究科講師、齋木潤 人間・環境学研究科教授の研究グループは、瞑想実践者の脳活動をMRI装置で測定した結果、洞察瞑想時に腹側線条体と脳梁膨大後部皮質の結合性が低下することを発見しました。

     本研究成果は、2018年7月2日に英国の国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、藤野 博士課程学生、野村 准教授、上田 特定講師

     本研究は、観想神経科学(Contemplative Neuroscience)という、とても新しい研究分野の研究です。この研究分野では、人類の長い歴史の中で、こころや身体を主観的に観察する力を高めた人々が体系化した技法や概念について、脳や身体を客観的に観察することのできる脳イメージング技術などを用いて検証を進めています。

     本研究では、伝統的な仏教で語られてきた、「今この瞬間に生じている経験にありのままに気づくこと」について、MRI装置や最新の解析手法を用いることで、その神経基盤を発見することができました。

     このような瞑想実践者を対象としたMRI研究としては、日本で初めての研究となります。本研究をきっかけに、日本でも多くの観想神経科学研究が進められることを願っています。

    概要

     健康や幸福感を高めるマインドフルネス実践法への注目が高まっています。マインドフルネス実践法は、特定の対象に意図的に注意を集中する集中瞑想と、今この瞬間に生じている経験にありのままに気づく洞察瞑想から構成されています。従来、「意図的に注意を集中する」ことの心理メカニズムや神経基盤の解明は進んでいましたが、「ありのままに気づく」ことの心理メカニズムや神経基盤は解明されていませんでした。

     本研究グループは、瞑想実践者の洞察瞑想時の脳活動をMRI装置で測定し、脳領域間の関係を調べる機能的結合性解析を実施しました。その結果、洞察瞑想時に、自分の過去の経験に関する記憶に捉われる程度と関係していると考えられる、腹側線条体と脳梁膨大後部皮質の結合性が低下することを発見しました。この結果は、今この瞬間に生じている経験に「ありのままに気づく」際に、自分の過去の経験に関する記憶に捉われる程度が低下していることを示唆しています。今後は、洞察瞑想によって自分の過去の経験から自由になれるという観点から、マインドフルネス実践法が日々の健康や幸福感を高めるメカニズムを解明することが期待されます。

    図:集中瞑想時と比較して、安静時から洞察瞑想時にかけて、左腹側線状態との結合性が低下した脳梁膨大後部皮質を中心とした脳領域を示している。

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】
    https://doi.org/10.1038/s41598-018-28274-4

    【KURENAIアクセスURL】
    http://hdl.handle.net/2433/232608

    Masahiro Fujino, Yoshiyuki Ueda, Hiroaki Mizuhara, Jun Saiki, Michio Nomura (2018). Open monitoring meditation reduces the involvement of brain regions related to memory function. Scientific Reports, 8, 9968.

    • 京都新聞(7月6日 25面)に掲載されました。

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