研究成果

日本列島の多様な菌から農業利用可能なものを選別 -植物150種と真菌8,080系統からなる巨大ネットワーク・データ-


2018年07月02日


     東樹宏和 生態学研究センター准教授らの研究グループは、北海道から沖縄で採集された植物150種とその地下共生菌で構成される大規模「共生ネットワーク」の構造を解明し、農業上の利用価値が高いと期待される菌のリストを作成しました。無数の微生物が含まれるデータを俯瞰して応用可能性の高いものを一挙に絞り込む本研究の戦略は、持続可能型農業における微生物の利用を加速させると期待されます。

     本研究成果は、2018年6月23日に英国の国際学術誌「Microbiome」にオンライン掲載されました。

    研究者からのコメント

    東樹 准教授

     自国優先主義が暗い影を落とすかのように感じられる昨今ですが、国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals; SDGs)に代表されるように、人類は共通目標に向けて着実に前進しつつあります。食糧の増産と生物多様性の保全は、私達の未来にとってどちらも欠かすことができませんが、「どちらを優先するか」という課題にときに直面してしまいがちです。農業生態系の設計と自然生態系の再生の両方に寄与し得る基礎科学を通じて、新たな方向性を探っていきたいと思います。

    概要

     世界人口が依然として増加し続け、持続可能な食糧生産の枠組みを構築することが地球規模で求められる中、植物に共生する多様な微生物の機能を有効活用しようとする研究が注目を集めつつあります。

     本研究グループは、北海道から沖縄で採集された植物150種の根からDNAを抽出し、DNAバーコーディング技術を用い、植物と地下で共生する8,080系統の真菌(きのこ・かびの仲間)を検出しました。そして、これらの植物と真菌で構成される大規模「共生ネットワーク」の構造を解明し、「中心性」と呼ばれる指標で真菌を評価しました。そのうえで、農業上の利用価値が高いと期待される菌のリストを作成しました。その結果、上位に位置する真菌の中には、ケートチリウム目(Chaetothyriales)やビョウタケ目(Helotiales)などに属する「内生菌」と呼ばれるものが多く含まれていました。こうした内生菌については未だに研究が少ない一方、作物種に強い正の効果を及ぼすもの(成長促進、病害抑制、低pHストレス耐性等)が知られつつあり、その真菌の中に農業上の利用価値が高いものが眠っている可能性が示唆されます。

    図:北海道から沖縄にかけての日本列島に生息する真菌8,080系統とその宿主植物種で創生されるネットワーク。植物種(緑色)とそれぞれの植物から検出された真菌(その他の色)が線で結ばれている。高頻度で関係が観察される植物と真菌ほど近くになるよう配置されている。このネットワーク内で中心に位置する真菌は、「共生できる植物種が多い」だけでなく、「地理的な分布範囲が広い」とみなすことができる。丸印の大きさは、「ネットワーク中心性」を示す。

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】
    https://doi.org/10.1186/s40168-018-0497-1

    【KURENAIアクセスURL】
    http://hdl.handle.net/2433/232575

    Hirokazu Toju, Akifumi S. Tanabe, Hirotoshi Sato (2018). Network hubs in root-associated fungal metacommunities. Microbiome, 6, 116.


    日本列島の多様な菌から農業利用可能なものを選別 -植物150種と真菌8,080系統からなる巨大ネットワーク・データ-
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