研究成果

自己免疫性関節炎の発症・慢性化に関わる新規細胞群と炎症ネットワークメカニズムの発見


2018年05月24日


     廣田圭司 ウイルス・再生医科学研究所准教授らの研究グループは、医学部附属病院、大阪大学、チューリッヒ工科大学(スイス)、フランシス・クリック研究所(英国)、エジンバラ大学(英国)と共同で、関節リウマチのマウスモデルを用い、自己免疫性関節炎を引き起こす炎症性T細胞が、関節炎の発症および慢性化維持に関わる新たな仕組みを明らかにしました。

     本研究成果は、2018年5月23日に米国の国際学術誌「Immunity」にオンライン公開されました

    研究者からのコメント

     難病の多くは自分の免疫細胞が自分の体に攻撃を始めることで発症します。医学が進んだ現在でも、完全に治すための治療法はありません。関節リウマチでも、はれた関節の中で何が起こっているのか、未だ分からないことが多いです。今回の研究成果は、炎症をおこす細胞同士のコミュニケーションが関節炎の発症と悪化につながることを示しました。新しく発見した炎症細胞やそれらが分泌する炎症物質をブロックすることで、新しい治療法になりうる可能性があります。引き続き、関節リウマチだけでなく治療法の確立されていない難病に対する新しい免疫療法開発に向け進んでいきたいと思います。

    概要

     関節リウマチは日本で約70万人の患者がおり、一年に1万人以上が新しく発症しています。病態は、全身性の炎症性疾患で、関節の腫脹を特徴とします。関節炎が起きた箇所にはさまざまな免疫細胞が集まり、正常なコントロールを失った炎症性の免疫細胞および滑膜細胞によって関節が破壊されます。これまで関節リウマチの発症・慢性化に関わる要因について未解明な点が多く、新規治療法の開発のためには、これらの詳細な分子機構の理解が必要です。

     本研究グループは、関節炎が起きた箇所の細胞群と炎症性サイトカインが新しい免疫治療法の標的となりうることに着目し、自己免疫性関節炎を引き起こす炎症性T細胞との細胞間の、および炎症性サイトカインとの炎症ネットワークを形成する因子を探索しました。

     本研究により、インターロイキン-17を産生する炎症性T細胞が、関節滑膜組織において、滑膜細胞および新しく見出した自然リンパ球と炎症ネットワークを形成することで、関節炎の発症および増悪に寄与していることがわかり、これまで不明であった関節リウマチの発症・慢性化の分子メカニズムの一端を明らかにすることができました。

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.1016/j.immuni.2018.04.009

    Keiji Hirota, Motomu Hashimoto, Yoshinaga Ito, Mayumi Matsuura, Hiromu Ito, Masao Tanaka, Hitomi Watanabe, Gen Kondoh, Atsushi Tanaka, Keiko Yasuda, Manfred Kopf, Alexandre J. Potocnik, Brigitta Stockinger, Noriko Sakaguchi, Shimon Sakaguchi (2018). Autoimmune Th17 Cells Induced Synovial Stromal and Innate Lymphoid Cell Secretion of the Cytokine GM-CSF to Initiate and Augment Autoimmune Arthritis. Immunity, 48(6), 1220-1232.e5.


    自己免疫性関節炎の発症・慢性化に関わる新規細胞群と炎症ネットワークメカニズムの発見
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