研究成果

電力をパケット化しデジタルに処理する枠組みを構築 -エネルギーと情報の統合に向けたアプローチ-


2018年05月21日


     縄田信哉 工学研究科博士課程学生(現・三菱電機株式会社)、牧淳人 スウェーデン王立工科大学(KTH Royal Institute of Technology)准教授、引原隆士 工学研究科教授の研究グループは、電力のパケット化技術に基づきデジタル化・量子化された電力を扱う電気エネルギーネットワークの枠組みを構築しました。

     本研究成果は、2018年5月16日に英国の国際学術誌「The Royal Society, Proceedings A」にオンライン掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、縄田博士課程学生、牧准教授、引原教授

    電力のパケット化は、電力パルスと情報タグの組みを単位とすることで電力をデジタル化・量子化する、きめ細かな電力の処理を行う技術です。京都大学では、近年のワイドバンドギャップ半導体パワーデバイスの発展に基づき、電力をパケット化する物理層の技術、すなわち具体的な電気電子回路および伝送システムを、世界に先駆けて開発してきました。本研究は、通信の基本原理となるシャノンの情報理論を参考に、電力の最小単位を「記号」として定め、電力を記号の個数により扱うネットワークの枠組みを与えることに成功しました。特に、KTHとの国際共同研究により、電力パケットによるエネルギー伝送を離散的なフローとして表現するSymbol Propagation Matrixの導入に成功しました。この共同研究では、動画(画像の時系列)から歩行者の特徴点の軌跡を抽出する研究が、電力パケットに自然な表現を与えるヒントとなりました。本研究の成果は、あらゆるモノがネットワークとして繋がるIoTの設計に理論的な基礎を与え、物理と情報を統合するサイバー・フィジカル技術にまで発展すると期待しています。

    概要

     電力パケットは、電力パルスと宛先等を表す情報タグから構成される電力の単位です。これまでに、本研究グループは、電力パケットを物理的に実現する技術や、電力パケットを蓄積・転送する電力ルータの技術を開発していますが、さらに今回、電力のパケット化技術に基づきデジタル化・量子化された電力を扱う電気エネルギーネットワークの枠組みを構築しました。

     シャノンの情報理論は、通信の問題が記号(例えば”0”と”1”)の系列を伝える問題と等価であることを示しています。この枠組みを参考に、電力パケットの記号を、電力パルスと情報タグから成る電力の最小単位として定義しました。そして、電力のパケット化をメッセージとエネルギーの記号系列による同時表現の問題として与えました。この問題設定は、電力を記号の個数により扱うもので、デジタル化・量子化された電力の表現を与えるものです。

     今回の研究では、記号として時間的・空間的に伝送される電力の表現として、Symbol Propagation Matrix (SPM) を導入しました。SPMは、デジタル化・量子化された電力を、時空間特徴を表すグラフ上のネットワークフローとして自然に表現します。望ましい需要と供給を記号の個数として実現する問題をSPMの表現により考え、連続世界と離散世界を行き来する離散凸解析の手法を用いることで、厳密解を求めることができる離散最適化問題として定式化しました。本研究成果は、従来のアナログ回路に基づく電力伝送に対して、異なる技術の可能性を数理的に保証するものです。

     

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.1098/rspa.2017.0552

    【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/231203

    Shinya Nawata, Atsuto Maki, Takashi Hikihara (2018). Power packet transferability via symbol propagation matrix. Proceedings of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Science, 474(2213), 20170552.


    電力をパケット化しデジタルに処理する枠組みを構築 -エネルギーと情報の統合に向けたアプローチ-
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