植物細胞壁中のリグニン・多糖間結合を初めて解明 -バイオマス変換法の開発や持続可能な社会の実現に貢献-

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西村裕志 生存圏研究所助教、渡辺隆司 同教授、片平正人 エネルギー理工学研究所教授らの研究グループは、植物細胞壁中の芳香族高分子であるリグニンと多糖間の共有結合を初めて解明しました。

本研究成果は、2018年4月25日に国際学術誌「Scientific Reports」誌にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

植物細胞壁の構造というありふれた材料ですが、意外にもまだ解明されていないことも多いのです。今回リグニンと多糖という性質の異なる高分子が植物細胞壁中で共有結合していることが NMR 法によって初めて明確に証明されました。地球上に最も多く存在するバイオマスの利活用開発への貢献が期待されます。

概要

植物バイオマスは光合成によって再生産可能な環境調和型資源として注目されています。樹木を含めた全ての維管束植物の細胞壁にはリグニンという芳香族高分子が存在し、セルロース、ヘミセルロースという多糖と一緒に存在しています。多糖とリグニンの分離は紙パルプの生産をはじめ、植物バイオマスから化成品やバイオ燃料を生産する上で重要な課題です。しかし、リグニンと多糖間の結合について、これまでは化学分析法などの間接的な分析による研究に留まっていました。

本研究グループは、木材中からリグニンと多糖間の結合部を多く含む試料を抽出し、2次元、3次元NMR法を用いて、リグニンと多糖間の共有結合のつながりと周辺構造を連続的に解析することに初めて成功しました。この成果は、150年以上にわたる植物科学の問題を解明し、植物科学に重要な基礎知見を提供するとともに、脱石油社会にとって重要な植物バイオマス変換法の開発にも貢献すると期待されます。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-018-24328-9

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/230957

Hiroshi Nishimura, Akihiro Kamiya, Takashi Nagata, Masato Katahira, Takashi Watanabe (2018). Direct evidence for α ether linkage between lignin and carbohydrates in wood cell walls. Scientific Reports, 8, 6538.