研究成果

細胞種ごとにもつ特徴である 「細胞らしさ」 が失われる仕組みの一端を解明


2018年04月13日


     池田隆 iPS細胞研究所特定研究員、沖田圭介 同講師、升井伸治 同講師(現・京都府立医科大学特任准教授)らの研究グループは、分化した細胞がもつ細胞らしさ(細胞同一性)がどのようにして維持されているのか、そのメカニズムの一端を明らかにしました。

     本研究成果は2018年4月11日(英国時間)に「Nature Communications」で公開されました。

    研究者からのコメント

    左から、池田特定研究員、沖田講師、升井講師

    今回の研究から、Srfがさまざまな細胞種特異的な遺伝子を制御して、細胞らしさ(細胞同一性)の維持状態をコントロールしていることがわかりました。Srfはあらゆる種類の細胞でもともと働いていることが知られており、細胞外の環境など、さまざまな刺激によって活性化されます。こうしたSrfへの刺激により細胞らしさが失われる可能性が示されました。将来的には外部からの刺激などにより細胞らしさを変化させ、細胞の種類を変更する技術の開発や、細胞らしさの維持が関わるような疾患メカニズムの解明等につながると期待されます。

    概要

     ヒトのからだはさまざまな種類の細胞から構成されています。一度分化した細胞はそれぞれ特徴的な遺伝子が働き、細胞同一性を維持しています。他の細胞へと変化することは通常はありません。分化した細胞に少数の遺伝子を導入すると他の細胞へ分化可能なiPS細胞ができる(初期化される)ことが知られていますが、この初期化における細胞同一性を不安定化させるメカニズムは十分に分かっていませんでした。

     本研究グループは、初期化を阻害する遺伝子を網羅的に調べた結果、細胞の種類毎にその遺伝子は異なりますが、細胞骨格の遺伝子であるβアクチンはさまざまな細胞で共通して初期化を阻害する働きがあることを明らかにしました。また、βアクチンの働きを抑制すると、Srfという転写因子が活性化され、細胞種に特徴的な遺伝子の働きが抑制されることがわかりました。Srfはすべての細胞種で働く転写因子であり、細胞外の環境をはじめ、さまざまな要因で活性化されます。今回の成果によって、いくつかの疾患の発症にSrfが関与している可能性が示されました。またSrfの働きを利用して、外部からの刺激によって細胞らしさ(細胞同一性)を変化させる細胞工学的な新技術の開発にも期待がもたれます。

    図:SrfiPS細胞コロニーを増加させる

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    • 京都新聞(4月24日27面)、日刊工業新聞(4月12日25面)、日本経済新聞(4月16日9面)および毎日新聞(4月21日21面)に掲載されました。

    細胞種ごとにもつ特徴である 「細胞らしさ」 が失われる仕組みの一端を解明
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