中国古代の統治機構や民族問題について新たな史実を明らかにしました

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宮宅潔 人文科学研究所准教授は、日本、中国、韓国、ヨーロッパの研究者らと共同で、新発見の出土史料を手がかりとして、戦争や軍事の視点から中国古代の統治機構や民族問題について新たな史実を明らかにしました。

本研究成果は、2018年4月2日に、「多民族社会の軍事統治 出土史料が語る中国古代」として出版されました。

研究者からのコメント

本研究は、新たに発見された出土文字史料の精読を一つの柱に、国内外の研究者による自由な討論をもう一つの柱にして進められました。こうしたやり方はいずれも、本研究の拠点となった人文科学研究所の、共同研究班において培われたものです。伝統的な手法を継承しつつ、それにより新たな成果を獲得することを、今後も目指していきたいと思います。

概要

日本における中国軍事史の研究は、政治史・経済史といった分野に比べると、あまり活発ではありませんでした。しかし、本研究グループは、特に中国古代の民族問題と戦争との関係に焦点をあて研究を行いました。

本研究において、秦漢から隋唐時代の占領統治の具体像や、被征服民の軍事利用などへのさまざまな分析により、秦の始皇帝が中国を統一した時、各地に役人や兵士を送り込んだものの、彼らへの食料供給制度が未整備だったことや、漢代に万里の長城の西端で防備に就いた兵士は、当初は帝国東部の出身者だったものが次第に現地住民に切り替えられたことなど、新たな史実が明らかになりました。

本研究成果により、中国軍事史の研究が活性化し、古来さまざまな民族が交錯・融合した「中国」をより深く理解する手がかりとなることが期待されます。

図:敦煌(とんこう)付近に築かれた漢代の「万里の長城」。漢代はこの長城を西の端としていた。(撮影:宮宅潔)

詳しい研究内容について

書誌情報

宮宅潔編(2018)『多民族社会の軍事統治 : 出土史料が語る中国古代』京都大学学術出版会.
https://www.kyoto-up.or.jp/books/9784814001361.html
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB2587805X