マテリアルズインフォマティクスを応用した高誘電率材料設計システムの開発に成功 -積層セラミックスコンデンサ誘電体材料の開発に新たな設計指針-

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公開日

田中功 工学研究科教授、林博之 同助教はファインセラミックスセンター、TDK株式会社、国立研究開発法人物質・材料研究機構と共同で、マテリアルズインフォマティクスを応用し、高い誘電率を有する常誘電体材料を理論計算から予測するシステムの開発に成功しました。本研究グループでは、この誘電率材料設計手法について、TDK株式会社が主体となり2017年12月にすでに特許出願を行っています。

現在この高誘電率材料設計手法により導出された高誘電率候補材料について合成・実証実験を行っており、予測された結晶構造を有する数種類の材料の合成に成功しています。

研究者からのコメント

最近の計算機と計算手法の進歩により量子力学に基づいた理論計算を多数の物質について実行し、そのデータを基に新材料を探索することが可能になってきました。本研究では、新しく開発した高誘電率材料設計手法により得られた候補材料を実用化(合成手法の開発、量産化)するのと並行して、さらに広範囲の材料組成の探索を可能にするための高速設計手法の開発も現在行っています。これらの成果により環境に優しい高誘電率材料開発に大きく貢献でき、積層セラミックコンデンサ材料の開発に新たな設計指針を与えると期待されています。

概要

積層セラミックスコンデンサはスマートフォンやパーソナルコンピュータなど様々な電子機器に使用されており、私たちの生活に欠かすことのできない誘電材料です。その材料には従来BaTiO 3 が主に用いられていますが、発見後70年以上経過しており、産業界を中心に新規材料のニーズが高まっています。

本研究グループは、マテリアルズインフォマティクス手法を活用し、第一原理計算(質中の原子の配置情報のみを与えることで量子力学の原理に基づき経験的なパラメーターを用いることなく電子状態、化学結合、エネルギー状態を計算する手法)を用いて広範囲に誘電体材料を探索しました。

図:マテリアルズインフォマティクスの概念図

詳しい研究内容について