研究成果

植物の生殖細胞をつくる鍵因子を発見 -花粉の精細胞をつくる仕組みは花の咲かないコケ植物に起源があった-


2018年01月26日


     山岡尚平 生命科学研究科助教、河内孝之 同教授、重信秀治 基礎生物学研究所特任准教授らの研究グループは、植物の生殖細胞をつくるための鍵となる遺伝子を発見しました。まず、陸上植物の祖先的特徴をもつゼニゴケにおいて、突然変異体をもとに生殖器をつくる遺伝子を同定しました。そして、シロイヌナズナでその相同遺伝子の機能を調べた結果、花粉の精細胞(動物の精子に相当)をつくるうえで必須の役割をもつことがわかりました。これは植物の生殖細胞の形成メカニズムを明らかにする成果です。

     本研究成果は、2018年1月26日午前2時に米国の学術誌「Current Biology」オンライン版に掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、河内教授、山岡助教

     卵と精子という生殖細胞がどのようにしてつくられるかは、生物学にとって基本的な問題です。また、植物の生殖メカニズムの研究は、農業・バイオテクノロジーの発展・技術開発に必要不可欠です。今後、遺伝子BONOBOが制御する分子メカニズムをより具体的に明らかにすることで、植物の卵や精子・精細胞をつくる実行因子などを明らかにでき、植物の生殖についての基本的な知見が得られると期待されます。

    概要

     花を咲かせる植物は、受粉することで種子をつくり、子孫を残します。これは、花粉の中で作られる「精細胞」が、雌しべの中の卵と受精することで起こります。しかし、精細胞をつくる分子メカニズムは、多くの部分が未解明のままになっています。

     ゼニゴケは、卵と精子を特有の生殖器(造卵器と造精器)の中につくって受精を行います。今回本研究グループは、BONOBOと名付けた転写因子が、ゼニゴケにおいて生殖器をつくる過程をコントロールしていることを明らかにしました。BONOBOはほぼすべての陸上植物にあって遺伝子ファミリーを構成していました。さらにシロイヌナズナのBONOBO相同遺伝子の解析を進めたところ、花粉の精細胞をつくるのに必要であることを突き止めました。これらのことから、BONOBOファミリーは陸上植物の生殖細胞をつくるために必要不可欠であることがわかりました。

     一見まったく違うようにみえる花粉の精細胞とコケ植物の生殖器は、類似の分子メカニズムを使ってつくられており、BONOBOは、約4億5千万年前に陸上植物が誕生したときから受け継がれてきた、陸上植物の生殖細胞形成の鍵となる遺伝子である、と考えられます。

    図:本研究の概要

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.1016/j.cub.2017.12.053

    Shohei Yamaoka, Ryuichi Nishihama, Yoshihiro Yoshitake, Sakiko Ishida, Keisuke Inoue, Misaki Saito, Keitaro Okahashi, Haonan Bao, Hiroyuki Nishida, Katsushi Yamaguchi, Shuji Shigenobu, Kimitsune Ishizaki, Katsuyuki T. Yamato, Takayuki Kohchi (2018). Generative Cell Specification Requires Transcription Factors Evolutionarily Conserved in Land Plants. Current Biology, 28(3), 479-486.e5.


    植物の生殖細胞をつくる鍵因子を発見 -花粉の精細胞をつくる仕組みは花の咲かないコケ植物に起源があった-
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