研究成果

連結分子の並びを巧みに制御できる高分子合成法を開発 -DNAのように分子情報を転写-


2018年01月24日


     植村卓史 工学研究科准教授、北川進 高等研究院物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)拠点長らの研究グループは、名古屋大学と共同で、分子でつくるナノサイズの空間を利用することで、高分子(ポリマー)を構成する単位となる低分子化合物であるモノマー分子の並び方を制御できる、新しい高分子合成法を開発しました。

     本研究成果は、2018年1月23日午後7時に英国の科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

    研究者からのコメント

    植村准教授

     今後は他のさまざまなモノマーの組み合わせを選択することで、多彩なモノマー配列を自在に設計し、特異なモノマー配列が物性に色濃く影響する機能性高分子材料の創製を行う予定です。

    本研究成果のポイント

    • モノマー分子の配列繰り返し構造が精密に制御された高分子材料を作り出すことに成功しました。
    • エレクトロニクスや医療分野に応用可能な機能性高分子材料の開発につながる成果です。
    • 超高密度記録媒体システムとしての展開も期待されます。

    概要

     モノマー分子がいくつも鎖状に連なった高分子は、自動車などの部品、医療器具、繊維、樹脂材料などに用いられ、私たちの生活に欠かせない材料となっています。昨今では高分子材料のニーズがいっそう高度化・多様化しているため、単一のモノマーだけではなく、2種類以上のモノマーを連結させることで、物性の大幅な改善や新しい機能を有する材料の開発が行われています。しかし通常の高分子合成では、フラスコや反応釜といった、モノマー分子に比べてはるかに大きい反応容器を使うため、モノマーが容器内で自由に動いてしまい、その反応順序を制御することは非常に困難です。そのため、得られる高分子の鎖の中では、モノマー分子が無秩序に連結されてしまい、効率よく機能を発揮することができませんでした。特に高分子材料として最も広く利用されているビニル高分子は、モノマーの配列制御が長年の課題でした。

     一方、生体系ではDNAやタンパク質のような、連結モノマー分子の順序が完全に規定された高分子が自然に生み出されています。これは、酵素の持つ内部空間が鋳型として機能することで合成されています。本研究グループは、このような自然界の摂理を参考にし、多孔性金属錯体(PCP)が有するナノ空間内にモノマー分子を周期的に配置・固定することで、モノマー分子の配列繰り返し構造が精密に制御された高分子材料を人工的に作り出すことに成功しました。

     モノマー分子の並び方を狙い通りに制御できるため、本研究成果はエレクトロニクスや医療分野に応用可能な機能性高分子材料の開発につながります。さらに、分子レベルの情報を正確に転写できることから、超高密度記録媒体システムとしての展開も期待されます。

    図:多孔性金属錯体(PCP)を用いてモノマーの配列を制御できる高分子合成法の模式図

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-017-02736-1

    【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/228951

    Shuto Mochizuki, Naoki Ogiwara, Masayoshi Takayanagi, Masataka Nagaoka, Susumu Kitagawa & Takashi Uemura (2018). Sequence-regulated copolymerization based on periodic covalent positioning of monomers along one-dimensional nanochannels. Nature Communications, 9, 329.

    • 日刊工業新聞(1月24日 30面)に掲載されました。

    連結分子の並びを巧みに制御できる高分子合成法を開発 -DNAのように分子情報を転写-
    現在の画像 JPEG image — 28 KB

    No