研究成果

高レベル放射性廃棄物低減・資源化の鍵、新たなミュー粒子生成法へ向け原理実証


2017年12月14日


     森義治 原子炉実験所特任教授、石禎浩 同准教授らの研究グループは、半減期の長い核種を変換処理するために用いる負の電荷をもつミュー粒子(ミュオン)の生成方式を新たに考案し、その根幹を担うビーム加速の原理実証に成功しました。

    研究者からのコメント

     私たちは、高レベル放射性廃棄物に含まれる長寿命核分裂生成物(LLFP)を低減・資源化する方法として、加速器による新しい核変換の経路を提案することを目指しています。なかでも負ミュオンを用いた核変換処理は、その変換効率の良さと処理後の各種の非放射性という特長から注目されています。しかしながら従来の加速器を用いた手法では、負ミュオン生成効率の低さが大きな問題でした。これを克服するために、連続ビーム加速と貯蔵が両立可能な「エネルギー回収型内部標的法」を用いた新しい負ミュオン生成法(MERIT法)を考案し、今回、その根幹部分である蛇行加速法の基礎研究において連続ビーム加速の原理実証に初めて成功しました。今後さらに基礎研究を積み重ねてゆき、高レベル放射性廃棄物の低減・資源化の夢の実現に向けて努力したいと思っています。

    概要

     原子力発電所などで生じる高レベル放射性廃棄物の処理・処分問題は、日本のみならず世界的な問題です。後の世代への負担を軽減するため、本研究グループは廃棄物から有用元素を回収し資源として利用する方法や、LLFPを取り出し短寿命核種や安定核種に核変換することで放射能を減らす方法を開発しています。

     核変換においては、重陽子のようなハドロン(強い相互作用で結びついている陽子、中性子、各種の中間子を含む素粒子群)ビームを用いた核破砕反応による変換が有効ですが、レプトン(相互作用の弱い素粒子)の一つである負ミュオンによる核変換処理も、効率の良さと処理後に生成される核種が最終的に非放射性であるという点から注目されています。

     しかしこれまでの方式では負ミュオンの生成効率が低く、核変換に必要な量の1000分の1程度の負ミュオンしか作ることができませんでした。この問題を解決する方法として、ビーム加速とエネルギー回復によるビーム貯蔵を両立させる、リング加速器での内部標的による負ミュオン生成法MERITが考案されましたが、一定磁場での強いビーム集束力と一定周波数の高周波による連続ビーム加速を両立させる必要があり、従来のリング加速器では実現困難でした。

     本研究グループは、強いビーム集束力を持つ固定磁場強集束(FFAG)加速器に、一定周波数の高周波磁場により加速する蛇行加速(Serpentine Acceleration)方式を適用した、従来にないハドロン加速器の研究開発を行い、ビーム加速の原理実証に世界で始めて成功しました。これはMERIT方式実現への展望が開ける成果です。

    図:高強度負ミュオン生成のためのMERITリングの概念図

    詳しい研究内容について


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