研究成果

チンパンジーのボディランゲージ、距離に応じて使い分け


2017年11月17日


     友永雅己 霊長類研究所教授、Chloe Marie Gonseth 同研究員、市野悦子 同教務補佐員、川上文人 高等研究院特定助教らの研究グループは、霊長類研究所に暮らす8人のチンパンジーを対象に、食物要求時の身ぶりについて研究しました。実験ではチンパンジーの手の届かない位置に食べ物を置き、人に取ってもらうよう要求しなければならない状況を用意して身振り手振りを観察しました。その結果、チンパンジーから遠い位置に食べ物を置くと、近い位置のときと比較してより高い位置から手を伸ばし、より大きく口を開けて要求するということがわかりました。

     本研究成果は、2017年11月15日に生物学の国際電子ジャーナル「Biology Letters」に掲載されました。

    研究者からのコメント

     相手に物の位置を伝えたい場合、その距離に応じて伝え方を変えるという能力がチンパンジーにもあることを示した本研究の結果は、身ぶりや言語といったコミュニケーションの進化を解き明かす上で重要な手がかりを示したといえます。私たちが考えていたよりも多くのことをチンパンジーが理解し、私たちに伝えようとしていたことを示唆しています。

     今後の研究の方向性として、距離以外の情報に関する身ぶりの使い分けがどうなされているのかを調べる必要があるでしょう。そして、人間から最も近い種であるチンパンジーにとどまらず、さらに進化の視点をさかのぼり、他の類人猿やヒトや類人猿以外の霊長類を対象とした研究も必要となってくるでしょう。

    概要

     私たち人間は、指さしや指示語、代名詞を使うことで、とってほしい物や一緒に見たい物の位置を、効率的に相手に伝えることができます。そのような文脈や状況に応じたコミュニケーションの能力を進化の視点から探るため、本研究グループはチンパンジーを対象に研究を行いました。

     注目したのは、食べ物の位置を距離的に変化させた場合、他者への伝え方に変化が生じるのかという点です。近いけれどもチンパンジーの手が届かないテーブルに食べ物を置いた「近い条件」(30cm)と、さらに離れた「遠い条件」(130cm)を用意し、そのテーブルの横に人間の実験者が「いる条件」と実験者が部屋に「いない条件」を設定しました。その結果、「いる条件」でのみ「近い条件」よりも「遠い条件」でチンパンジーが手を高いところに挙げて、口を大きく開けて食べ物を要求するということがわかりました。

     これはチンパンジーが相手に物の位置を伝える際、自分と物との距離に応じて身ぶりの表し方を変化させるということです。「『あれ』をとってください」と「『これ』をとってください」が、チンパンジーにおいても異なるということを初めて示しました。

    図:手を差し伸べ食べ物を要求するチンパンジー、ポポ(撮影:Chloe Marie Gonseth)

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.1098/rsbl.2017.0398

    【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/227908

    Chloe Gonseth, Fumito Kawakami, Etsuko Ichino and Masaki Tomonaga (2017). The higher the farther: distance-specific referential gestures in chimpanzees (Pan troglodytes). Biology Letters, 13(11), 20170398.

    • 中日新聞(11月16日 27面)および読売新聞(11月17日夕刊 10面)に掲載されました。

    チンパンジーのボディランゲージ、距離に応じて使い分け
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