安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(CMG)の開発に成功 -抗がん剤などとしての実用化に期待-

ターゲット
公開日

掛谷秀昭 薬学研究科教授、金井雅史 医学研究科特定准教授らの研究グループは、株式会社セラバイオファーマと共同で、ウコンに含まれるクルクミンの生体内代謝物に着目することで、安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(CMG)の開発に成功しました。本薬剤は顕著な抗がん活性を持ちます。飲み薬としては吸収されづらいというクルクミン原末の問題点を克服した成果です。今後抗がん剤などとしての実用化が期待されます。

本研究成果は、2017年9月1日午前0時に日本薬学会誌「Biological and Pharmaceutical Bulletin」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

クルクミンの生体内代謝物に着目することで、安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(CMG)の開発に成功しました。本成果はクルクミン原末の問題点を克服しており、がん及び炎症性疾患など様々な疾病の治療薬として実用化されることを期待しています。

本研究成果のポイント

  • 経口吸収性が非常に低いクルクミン原末の問題点を克服
  • 水溶性プロドラッグ型クルクミン(CMG)の顕著な抗がん活性を確認
  • がん及び炎症性疾患などさまざまな疾病の治療薬として期待

概要

ウコンに含まれるポリフェノール化合物クルクミンはさまざまな生理作用が報告されており、がん、心臓病、アルツハイマーなどに関する基礎研究や臨床研究が行われています。しかし、クルクミン原末をそのまま摂取しても多くは腸で吸収されないため、血液には移行せず肝臓を含む各種臓器での顕著な効果を期待できません。そこで、クルクミンをより使いやすくするために、誘導体開発研究及びドラッグデリバリーシステム開発研究などが世界中でしのぎを削っています。しかし、未だ有効な薬剤及び手法は開発されていないのが現状です。

本研究グループは、クルクミンの生体内代謝物解析(メタボローム解析)の結果などから、クルクミンモノグルクロニド(CMG)がクルクミンのプロドラッグとして利用できることを発見しました。プロドラッグとは、生体内で代謝され活性代謝物となる薬剤です。

化学合成したCMGをラットに静脈投与した際に、これまでのクルクミン原体などの経口投与と比較して、クルクミンが極めて高い血中濃度を示すことを明らかにしました。さらに、ヒト結腸腺癌細胞を移植したマウスモデルにおいて、CMGは体重減少や肝障害などを伴うことなく、顕著な抗がん活性を示すことも明らかにしました。したがって、CMGは安全性の高い抗がん剤などとしての実用化が期待されます。

図:ヒト結腸腺癌を移植したマウスにCMGを静脈投与。CMGは抗腫瘍作用を示す。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1248/bpb.b17-00339

Hitomi Ozawa, Atsushi Imaizumi, Yoshihiko Sumi, Tadashi Hashimoto, Masashi Kanai, Yuji Makino, Takanori Tsuda, Nobuaki Takahashi, Hideaki Kakeya (2017). Curcumin beta-D-glucuronide plays an important role to keep high levels of free-form curcumin in the blood. Biological and Pharmaceutical Bulletin. 40(9), 1515-1524.

  • 日刊工業新聞(9月1日 25面)に掲載されました。