観測値から地盤挙動のメカニズムを把握し将来予測精度を向上 -シミュレーションと実測データを融合した実用的「地」象予測に期待-

ターゲット
公開日

村上章 農学研究科教授らの研究グループは、数値シミュレーションなどによって得られる予測値を、実際に観測されるデータに合理的に近づける作業であるデータ同化によって、砂や粘土といった地盤材料の変形を計測したデータをシミュレーションモデルと融合し、より実際の地盤の動きに近い予測ができるような適切な構成モデル(加えた力と変形量の関係を記述するモデル)と弾塑性材料(作用した力がなくなると変形が回復する性質と変形が回復しない性質の両方の性質を持つ材料)の材料パラメータを決定することに成功しました。

本研究成果は2017年7月14日にInternational Journal for Numerical and Analytical Methods in Geomechanicsに掲載されました。

研究者からのコメント

今回の手法を用いた予測結果と実際の観測値、設計時のシミュレーション結果を比較してみると、今回の予測手法はこれまでの手法に比べ実際の観測値とかなり近い予測ができていることを確認しました。このように、データ同化手法を地盤の変形計算にうまく組み込むことで、土の基本的な変形特性を確認しながら地盤強度を精度よく予測することが可能となります。

概要

データ同化は、予測のための最適な計算条件やシミュレーションモデルに必要なパラメータの最適値を求めることなどを目的に行われます。

本研究では地盤を対象として、地盤の動きをシミュレートする際の最適なパラメータ設定を目的としていますが、地盤変形の計測データをもとに、今まで困難であった土の弾塑性モデルの選択と材料パラメータの同定を同時に行い、それらの最適な組み合わせを合理的に決定する手段を提案しています。今回の研究では、神戸空港人工島の地盤のデータを用いて提案手法の有効性を実証しました。

地盤構造物の設計には、事前に、材料となる土の弾塑性モデルを選定する必要があります。本研究で提案した方法により、従前より精度の高い将来予測が可能となり、実務上の応用が大きく期待されます。

神戸空港人工島の地盤断面図とデータ同化結果

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1002/nag.2717

Akira Murakami, Hayato Shinmura, Shintaro Ohno, Kazunori Fujisawa (2017). Model identification and parameter estimation of elastoplastic constitutive model by data assimilation using the particle filter. International Journal for Numerical and Analytical Methods in Geomechanics, 42(1), 110-131.