研究成果

タリム盆地の掘削調査で地下7kmの地殻にかかる力を計測


2017年07月04日


     林為人 工学研究科教授、孫東生 中国地質科学院地質力学研究所主任研究員、曽根大貴 ウィスコンシン大学マディソン校助教らの研究グループは、中国のタリム盆地で行われた天然ガス探査の掘削調査によって、地下7kmというこれまでにない大深度から取り出した岩石試料の地殻応力(地殻を構成する岩石に力がかかったとき、それに応じて岩石内部に生じる抵抗)測定に成功しました。今回の計測には、岩石試料を地層から切り離す前にかかっていた力を測定できるASR法という計測手法を用いていますが、これほどの大深度で周囲の地層の様子などと整合性のある測定に成功したのは今回が初めてです。大深度での地殻応力が測定可能になったことで、地球科学や地球工学などの分野で更にASR法活用が進むことが期待されます。

     本研究成果は、2017年7月3日午後6時に、英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
     

    研究者からのコメント

     一般的には、災害を引き起こすような地震の震源深度は5km以深から数10kmであり、石油や天然ガス貯留層の深度も数km以深の場合が多いとされています。そのため、このような大深度における応力測定がより重要であると言えます。今回、深度約7kmでの地殻応力はASR法で計測できることが確認されました。東南海地震と南海地震の震源断層であるフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界断層を掘削する海洋科学掘削プロジェクトが南海トラフ海域で行われており、海底下深度5kmまでの掘削が計画されています。そのような掘削の際にも、ASR法により地殻応力測定の道筋ができるものと期待されます。したがって、今後は地震断層や地下天然エネルギー関連の大深度掘削において、ASR法を用いた地殻応力の測定をさらに積極的に行っていきたいと考えています。

    概要

     地震や火山運動などの地殻運動を理解し解明するには、その原動力である地殻応力の状態を知ることが必要不可欠です。地殻深部に現在かかっている応力を実際に計測するには大深度掘削が必要ですが、技術的・予算的な制約から実施が難しい場合が多いのが現状です。加えて、大深度下では孔内の高温や不安定な孔壁の状態などで計測が難しいため、掘削で取り出した岩石試料を用いた測定手法の確立に期待が寄せられています。

     これまで岩石試料を用いたさまざまな応力測定の手法が提案されてきたものの、信頼性の高い手法はいまだに存在していません。大深度での地殻応力計測は地震発生メカニズムの解明などの地球科学分野と、石油等の地下天然エネルギー資源開発などの地球工学分野から強いニーズが寄せられており、手法の確立を目指した研究が世界各地で行われていました。

     本研究グループは、天然ガスの探査のためタリム盆地の中央部に掘られた深度7,169mの大深度鉛直掘削で取り出された試料を用いました。採取直後の掘削岩石試料に地殻応力測定ASR法を適用し、盆地中央部の応力状態の測定を試みました。その結果、タリム盆地の中央部6kmから7kmの深度範囲における現在の地殻応力状態は、鉛直方向の応力成分が最大で、水平成分が最小となる正断層を形成するような状態であることが判明しました。この応力状態は、タリム盆地周辺に見られる、水平応力成分が最大で、鉛直成分が最小となる逆断層の応力状態とは異なるものです。ASR法による応力測定結果は、掘削孔の孔壁に発生した局所的な破壊から推定された二次元応力状態とも整合性のあるものでした。更に盆地中央部の音波探査で観察された正断層の構造特性とも一致しました。つまり、地殻応力測定ASR法は7kmの大深度下でも適用できることが証明されたといえます。

    図:地下約7kmの深度から採取し今回の実験に用いた岩石試料。試料の表面に貼り付けた「ひずみゲージ」で微小なひずみを測定する。

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-017-04516-9

    【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/226312

    Dongsheng Sun, Hiroki Sone, Weiren Lin, Junwen Cui, Bizhu He, Haitao Lv  & Zicheng Cao (2017). Stress state measured at ~7 km depth in the Tarim  Basin, NW China. Scientific Reports, 7, 4503.


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