研究成果

世界最古のオーロラ観測図像は8世紀まで遡ることが判明


2017年07月04日


    ※図を差し替えました。(2017年7月5日)

     早川尚志 文学研究科修士課程学生(現・大阪大学博士課程学生)、河村聡人 理学研究科博士課程学生、玉澤春史 同博士課程学生、海老原祐輔 生存圏研究所准教授、磯部洋明 総合生存学館准教授らの研究グループは、三津間康幸 東京大学学術研究員をはじめ、国立極地研究所、東北大学、国文学研究資料館の研究者と共同で、8世紀末のシリア語史料「ズークニーン年代記」の自筆手稿本におけるオーロラ・彗星図像が観測記録として世界最古のものである可能性を明らかにしました。

     本研究成果は、日本天文学会欧文研究報告(PASJ=Publications of Astronomical Society of Japan)(2017年4月号)に掲載され、本号の表紙に選ばれました。

    研究者からのコメント

     本研究成果は、単に最古のオーロラ図像史料の年代を8世紀程度遡らせただけでなく、近代観測以前の歴史文献の図像史料が現代科学に大きな示唆を与えることを実証するものです。400年前後の「短期的」な近代観測で知られている各天文現象の「常識」が、果たしてより「長期的」にも「常識」であり続けるのかについて疑問を投げかけるものです。今やオーロラについてのみでも、文字記録で2,500年以上、図像史料で1,200年以上のデータがあることが示されました。今後私たちは、このような比較的「長期」の歴史史料を科学データと照合していくことで、近代観測以前の天文現象の実態に迫りたいと考えています。

    概要

     「近代天文観測」が始まったのは17世紀初頭とされますが、人類が夜空を見上げた歴史はその遥か以前に遡ります。このような歴史記録は「近代観測」以前の天文現象を考える上で必要不可欠です。例えば、歴史文献は前近代のオーロラ・黒点記録を通して近代観測以前の太陽活動の様子を、また「客星」(常には見えず、一時的に現れる星)の記録を通して超新星爆発の貴重な情報を今日の科学者に伝えてくれます。このような記録の中でも、図像史料は特に重要です。前近代の観測の文字記録が時としてごく簡潔で、或いは極めて象徴的なのに対し、図像史料はその様子を文字記録と相補いながら、当時の天文現象の様子を伝えてくれるからです。このような図像史料がその真価を示すのは、観測者本人の手で描かれたときです。これまでオーロラの文字記録についての検討は繰り返し行われ、最古のオーロラ記録が遥か紀元前6世紀まで遡ることが究明されてきました。しかし、図像史料については16世紀以前のものについて研究が進まず、それ以前のいくらかの史料で天文図像の存在が指摘される一方、そのオリジナルの図像についての文理両面からの検討はなされないままでした。

     今回本研究グループは、8世紀末に編纂された「ズークニーン年代記」の自筆写本の原写本を東京大学の三津間学術研究員の協力のもと調査し、全部で10個の天文図像について文理両面からの検討を行いました。その結果、各々の天文図像は年代記作者本人の絵であること、全部で10個の天文図像のうち、767年以降に記録された天文図像4個が年代記作者本人の直接観測に基づくもので、760年の彗星図像は本人の同時代人からの直接伝聞に基づく記録であること、これに伴って従来16世紀までしか遡らないと思われていた観測記録としてのオーロラの図像が771/772年まで遡ることなどを明らかにしました。

    図:シリア語写本MS Vat.Sir.162に見える771/772年のオーロラ図像(MS Vat.Sir.162, f. 150v.)。年代記作家本人の直接観測による最古の図像と言える。前出の「さかさまの弓」という記述から、図の向きは該当の写本のフォリオを横倒しにしたものであることが分かる。MS Vat.Sir.162 © 2017, Bibliotheca Apostolica Vaticana, reproduced by permissions by Bibliotheca Apostolica Vaticana, with all right reserved.

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 https://doi.org/10.1093/pasj/psw128

    Hisashi Hayakawa, Yasuyuki Mitsuma, Yasunori Fujiwara, Akito Davis Kawamura, Ryuho Kataoka, Yusuke Ebihara, Shunsuke Kosaka, Kiyomi Iwahashi, Harufumi Tamazawa, Hiroaki Isobe (2017). The earliest drawings of datable auroras and a two-tail comet from the Syriac Chronicle of Zūqnīn. Publications of the Astronomical Society of Japan, 69(2), 17.

    • 京都新聞(6月19日)、毎日新聞(6月28日 27面)および読売新聞(6月27日夕刊 9面)に掲載されました。

    世界最古のオーロラ観測図像は8世紀まで遡ることが判明
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