霊長類と野生ウマの社会システムの比較 -ポルトガルでの新たな調査による検証-

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平田聡 野生動物研究センター教授、松沢哲郎 高等研究院特別教授、リングホーファー萌奈美 神戸大学研究員、山本真也 神戸大学准教授らの共同研究グループは、野生のウマを研究する新たな調査地を開拓し、ウマの社会構造と霊長類の社会構造の比較を行いました。霊長類学の蓄積を活かし、霊長類以外の動物との比較を行う研究の新展開です。

本研究成果は、2017年6月5日午後7時にSpringer社の学術誌「Primates」に掲載されました。

研究者からのコメント

家畜として人間とかかわりの深いウマですが、意外にも野生状態での行動についてはあまり研究されてきませんでした。霊長類研究の蓄積をもとに、新たにウマを研究することで、動物における社会システムの進化に関して今後さらに多くのことが明らかになると期待しています。

概要

野生ウマは、有蹄類には珍しく霊長類に類似した、社会的に安定した雌雄混合群を形成します。霊長類の社会に関する研究は多く蓄積されてきましたが、ウマの社会に関する研究はまだ少ないのが現状です。

そこで本研究グループは、ポルトガルで野生のウマ26群の計208個体を識別し、社会生態学的データを収集しました。そのうえで、霊長類社会における群内オス数(単雄・複雄)に関する仮説がウマ社会に当てはまるかを検証しました。その結果、ウマ社会には仮説が当てはまらず、その要因は霊長類とウマにおけるオス-メス関係の違いにあると考えられることが分かりました。

図:(左)単雄の雌雄混在群。一番左にオス、右から2番目には昨年生まれの未成熟個体がいる。
(右)母ウマと歩く、生まれて数ヶ月の子ウマ

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1007/s10329-017-0614-y

Monamie Ringhofer, Sota Inoue, Renata S. Mendonça, Carlos Pereira, Tetsuro Matsuzawa, Satoshi Hirata, Shinya Yamamoto (2017). Comparison of    the social systems of primates and feral horses: data from a newly established horse research site on Serra D'Arga, northern Portugal. Primates, 58(4), 479–484.