研究成果

一個の水分子により水和されたフッ化水素の単離に成功 -水素結合を利用した電子デバイス材料の開発に期待-


2017年04月24日


     張鋭 工学研究科博士課程学生、村田理尚 化学研究所助教(現 大阪工業大学准教授)、若宮淳志 同准教授、村田靖次郎 同教授、下赤卓史 同助教、長谷川健 同教授らの研究グループは、一個の水分子により水和されたフッ化水素を、炭素原子が球状に結合しているフラーレンの一種であるC70の内部に閉じ込めることに成功しました。

     本研究成果は、2017年4月22日に米国の科学誌「Science Advances」に掲載されました。

    研究者からのコメント

     当初は、化合物の開口部の大きさが小さいことから、HF分子のみが分子内部に挿入されることを期待していました。しかし、実験を行ってみると、入るはずは無いと考えていたH2O、さらにはH2O-HF錯体まで入っていることが分かり、大変驚きました。このような予想外の結果を見つけてくれた張君、ならびに精密な解析を行って貰えたチームのメンバーに感謝しています。

    概要

     水溶液中における酸の解離は化学の最も重要なプロセスの一つですが、複数の水分子が関与するため、分子レベルで構造の明確な分子錯体(中心イオンまたは中心原子に、別種のイオン、分子、多原子イオンが結合した集合体)の研究はほとんどありませんでした。

     本研究グループは、フラーレンC70に開口部を構築し、そこからフッ化水素分子(HF)を挿入したところ、一個のHF分子の内包が確認されただけではなく、H2O-HF錯体、ならびに一個の水分子がC70の内部に挿入できることを見出しました。その後、開口部を元通りに修復することによって、これらの化学種を内包したC70の合成に成功しました。C70内部のH2O-HF錯体は、強い水素結合により固定化されていることが分かり、また、外側のフラーレン骨格が少し膨らんでいることが明らかとなりました。

    図:HF分子、H2O-HF錯体、ならびにH2O分子を内包したフラーレンC70

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 https://doi.org/10.1126/sciadv.1602833

    【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/220440

    Rui Zhang, Michihisa Murata, Atsushi Wakamiya, Takafumi Shimoaka, Takeshi Hasegawa and Yasujiro Murata (2017). Isolation of the simplest hydrated acid. Science Advances, 3(4), e1602833.

    • 日刊工業新聞(4月27日 23面)に掲載されました。

    一個の水分子により水和されたフッ化水素の単離に成功 -水素結合を利用した電子デバイス材料の開発に期待-
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