研究成果

チンパンジーは「三にして立つ?」行動研究からわかったチンパンジーの栄養的自立の時期


2017年03月31日


     松本卓也 理学研究科・日本学術振興会特別研究員(現 総合地球環境学研究所研究員)は、タンザニアのマハレ山塊国立公園において、野生チンパンジーの赤ちゃんの食生活を調べ、母乳を必要としなくなる栄養的自立の時期を推定しました。フィールド調査の結果、3歳以上の赤ちゃんはより長い時間を食事にあて、消化が難しい植物の葉をより長い時間食べるようになることや、赤ちゃんには食べ難い食物を自力で食べるようになることが明らかになりました。

     本研究成果は、2017年3月20日付けで国際学術誌「American Journal of Physical Anthropology」誌(電子版)に掲載されました。

    研究者からのコメント

     ヒトの進化についての話の中で、これまで赤ちゃんは、「離乳食を与えられる」「二足歩行の大人に運ばれる」といった、受動的な立場で語られることが多かったように思います。

     本研究は、「赤ちゃんの栄養的な自立」という観点から、いわば赤ちゃん目線で、離乳という現象を捉え直そうとしたものです。

     本研究成果は、ヒトの離乳時期が早期化する進化の過程において、赤ちゃんにどのような影響があり、また、赤ちゃんがどのような役割を果たしたか、を考察するための足がかりになると考えています。

    概要

     赤ちゃんが母乳を必要としなくなる時期はいつなのか。この問いは、子育て中の家庭にとってだけでなく、人類の進化の過程を考える上でも重要な問題です。ヒトに最も遺伝的に近いチンパンジーは、お乳をくわえるのをやめる時期や、母親が次の子を妊娠する時期を基準に、およそ4歳から5歳で離乳するとされていました。一方、近年の長期調査の成果では、3歳近くのチンパンジーの赤ちゃんは、母親が失踪し孤児になっても生き残る可能性があることがわかってきました。つまり、チンパンジーの赤ちゃんは、3歳近くで栄養的に母乳に頼らなくなり、自立している可能性があります。

     そこで本研究では、タンザニアのマハレ山塊国立公園でフィールドワークを行い、野生チンパンジーの赤ちゃんの食生活を調べました。その結果、3歳以上の赤ちゃんは、より長い時間を食事にあてるようになることがわかりました。また、消化が難しい植物の葉をより長い時間食べるようになることや、堅い殻に覆われた実など、赤ちゃんには食べ難い食物を、自力で食べるようになることがわかりました。こうした食生活の大きな変化は、チンパンジーの赤ちゃんが母乳に頼らずに生きていくための基礎になっていると考えられます。

    図:3歳近いチンパンジーの赤ちゃんが、操作の難しい食べ物を自力で食べている様子。お母さんが赤ちゃんの食べる様子を覗き込んでいる。

    詳しい研究内容について

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