草刈りの匂いで作物の防衛力を強化 -草刈り時の匂いを受容した大豆株では葉と豆の被害が減少し、豆中のイソフラボン量が増加する-

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高林純示 生態学研究センター教授、小澤理香 同研究員、塩尻かおり 龍谷大学講師、山下賢一 バイエルクロップサイエンス株式会社技術顧問らの研究グループは、生育初期のダイズ株に草刈り由来の雑草(セイタカアワダチソウ)の匂いを暴露すると、その後の株の防衛能力が向上すること、さらに種子(次世代)のイソフラボン量が増加することを明らかにしました。傷を受けた植物の匂いが近くに生えている傷を受けていない植物の防衛能力を高めるという「植物間コミュニケーション」が、草刈りという農作業で成立していることを明らかにしました。

本研究成果は、2017年1月30日午後7時に英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

左から、高林教授、小澤研究員、塩尻講師、山下技術顧問

本研究は草刈り由来の雑草の匂いに注目し、それが隣接する作物の害虫抵抗性に影響することを野外で解明した初めての例です。さらに匂いの効果は植物の次世代まで影響すること(親から子への影響)を明らかにできました。

草刈り由来の匂いが野外でこのような生態機能を有することは、これまでの草刈りに対する認識を大きく変えるものだと考えられます。さらに害虫管理への応用という面でも新しいシーズになる可能性があります。

概要

植物間コミュニケーションについては、本研究グループ以外にも、海外のさまざまな研究組織でその実態解明が進められています。例えば、植食者の被害を受けた植物は、被害に応答して特別な匂いを放出しますが、その匂いを隣接する被害を受けていない植物が受容した場合、受容植物はさまざまな防衛レベルを「前もって」高め、来るべき食害に備えることが分かっています。また、人為的に傷をつけた植物からでる匂いでも、同様の植物間の匂いコミュニケーションが行われることも明らかになっています。これらの研究の多くは実験室内で行われており、野外での実証はデザートセージの研究などごく少数に限られています。

草刈りで発生する傷ついた雑草の匂いも、それを受容した隣接する作物との間でコミュニケーションを成立させる機能があると予想されます。草刈り由来の匂いが作物に与える影響は、生態学的(植物間の匂いコミュニケーションの野外での実証)にも、農学的(草刈りの匂いで作物を強くする可能性)にも興味深い問題でした。

そこで本研究グループは、ダイズ畑の中にセイタカアワダチソウ(雑草)を裁断しネットに入れたものを設置し、生育初期の2週間から3週間のみ草刈りの匂いに触れさせました。

その結果、成長期(9月)の時点で、未処理区に比べて処理区では葉の被害が少ないことがわかりました。また収穫時の害虫によるダイズ種子の被害も減りました。つまり、短期間の草刈り由来の匂い経験がその後のダイズ株の生育・繁殖に影響している結果です。さらに収穫したダイズ豆中のイソフラボン類の量も増加していることも分かりました。これら物質の増加は植物間コミュニケーションにおける「親から子への影響」を示しています。植物間コミュニケーションは、同世代個体間ばかりでなく、「世代間にも影響している」ことを世界で初めて実証できました。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 http://doi.org/10.1038/srep41508

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/217933

Kaori Shiojiri, Rika Ozawa, Ken-Ichi Yamashita, Masayoshi Uefune, Kenji Matsui, Chigen Tsukamoto, Susumu Tokumaru, Junji Takabayashi. (2017). Weeding volatiles reduce leaf and seed damage to field-grown soybeans and increase seed isoflavones. Scientific Reports, 7: 41508.

  • 京都新聞(1月31日 29面)に掲載されました。