研究成果

生態系を動かす「ハブ生物種」を探る新手法 -多様な種からなる生態系の相互作用ネットワークに挑む研究戦略-


2017年01月27日


     東樹宏和 人間・環境学研究科助教、山道真人 白眉センター特定助教らの研究グループは、生態系の中で「ハブ」として機能する生物を数百・数千種の中から探り出す新たな研究手法を開発・提案しました。この成果は、生態系内に存在する無数の生物種の中から「生態系に大きな影響を及ぼし得るため、優先的に研究すべき種」を選定する作業を大幅に効率化すると期待されます。

     本研究成果は、2017年1月24日に英国の科学誌「Nature Ecology&Evolution」に掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、東樹助教、山道特定助教

     現在でも10億の人たちが十分な食糧を得られない中、世界人口が増え続けています。世界中で台頭する自国優占主義の背景にも、「地球上の資源が有限である」ことをすでに知ってしまった私たち一人一人が持つ潜在意識が働いているのかもしれません。このような時代だからこそ、地球上の資源を有効に利用して共存する道を探っていかなければいけません。今回の研究成果は、”Perspective”(視点/観点)という形式の論文として出版されました。世界各国の研究者と連携しつつ、地球規模の課題を解決する方向性を日本から発信していけたらと思います(まだまだ発信力が足りませんが)。

    概要

     地球上の人口が増え続ける中、食糧を安定的に供給する上で、また、進行する数々の環境問題に対処する上で、生態系に関する知識がますます重要性を増してきています。しかし、無数の生物種が複雑に関係し合う生態系を研究する際、「まずどの種から研究すべきか」決めること自体に困難が伴います。

     本研究ではまず、生物種間の関係における「物理的接触」に着目し、DNA情報に基づく相互作用の情報を大量に得る技術を基本としました。例えば、肉食動物の糞や腹のサンプルには、肉食動物自体のDNAとともに食べた餌種のDNAも含まれています。こうしたDNAに関する情報を集めれば、食う-食われる関係や共生・寄生関係に関する大規模な「ネットワーク構造」を推定することができます。このネットワークの情報があれば、どの種がより多くの他種と関わっている「ハブ」なのか、把握することができます。

     しかし、たとえ1ヶ所の生態系でハブであったとしても、別の地域の生態系では、他の種がハブになっているかもしれません。そこで本研究グループは、「幅広い地域の生態系において繰り返しハブとして出現する種」を選別する方法を提案しました。この手法で定義される「ハブ生物種」は、幅広い地域に渡って多数の生物種の生態や進化に影響を及ぼしている可能性があり、今後重点的に研究することで、生態系全体の動態に関する理論や応用技術が発展すると期待されます。

     従来の研究では、個々の研究者が限られた生物群のみを対象としてきており、生態系全体の構造に関する知見が限られてきました。しかし、生物であれば必ず持っているDNAの情報を用いることで、一人の研究者が生態系全体の動態を研究できる時代が拓かれつつあります。今回提案した手法を用いれば、対象となる生物群集の全体構造を研究の初期段階において一挙に解明し、数百・数千の生物種の中から重点的に研究予算と労力を投入すべき種を選ぶことができます。今後は、この手法で選別された種が実際に重要な働きをしているのか、検証研究を展開していく予定です。

    図:分布域の広い種の選別(左)とハブ種(メタ群集ハブ)の絞り込み(右)

     

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 http://dx.doi.org/10.1038/s41559-016-0024

    Hirokazu Toju, Masato Yamamichi, Paulo R. Guimarães Jr., Jens. M. Olesen, Akihiko Mougi, Takehito Yoshida and John N. Thompson. (2017). Species-rich networks and eco-evolutionary synthesis at the metacommunity level. Nature Ecology & Evolution, 1:0024.


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