研究成果

タンパク質中の原子の動き、自由電子レーザーにより動画撮影に成功 -光によって水素イオンを輸送する仕組みを解明-


2016年12月26日


     南後恵理子 医学研究科客員研究員(理化学研究所研究員)、岩田想 医学研究科教授(理化学研究所グループディレクター)、久保稔 理化学研究所専任研究員、矢橋牧名 同グループディレクター、登野健介 高輝度光科学研究センターチームリーダー、中根崇智 東京大学特任研究員、木村哲就 神戸大学特命講師、溝端栄一 大阪大学講師、Richard Neutze ヨーテボリ大学教授らの共同研究グループは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAの高品質な光を利用して、膜タンパク質が働く瞬間を原子レベルで、コマ送り動画のように捉えることに世界で初めて成功しました。

     本研究成果は、2016年12月23日午前4時に米国の科学雑誌「Science」に掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、岩田教授、南後客員研究員

     今回、私たちはX線自由電子レーザー施設SACLAで、膜タンパク質が働く瞬間の構造変化を原子レベルで捉えることに成功しました。タンパク質が働く時の動きや仕組みをこれほど詳細に捉えたのは、世界でも初めての例です。

     今後、光で反応するタンパク質だけでなく、光で反応しない酵素や受容体などの他の種類のタンパク質についても、X線自由電子レーザーを用いて、その仕組みの詳細な解明が進むことが期待されます。

    概要

     タンパク質は生物の重要な構成成分の一つであり、化学反応の触媒や物質の移動などさまざまな役割を担っています。タンパク質が働く仕組みには立体構造が深く関わっており、構造や仕組みを原子レベルで解明するためにSPring-8などでの放射光を利用したX線結晶構造解析が用いられてきました。しかし、従来のX線結晶構造解析法では止まっている状態しか観測できず、動いている状態の観測は困難でした。

     そこで本研究グループは、XFEL施設を用いて動いているタンパク質の形を調べることができる実験装置を開発しました。また、実際にSACLAの実験で光を受けて水素イオンを輸送する膜タンパク質を使い、膜タンパク質が働く瞬間の動画撮影に成功しました。

     今回の成果により、タンパク質が「動いている」状態を原子レベルで解明することができるようになりました。将来的には医薬品や機能性分子の設計開発など、医療や工業への幅広い応用も期待されます。

     

    図:測定を行った時点と観測されたタンパク質構造の主な変化

    タンパク質が光で反応を開始してから、ナノ秒からミリ秒における13時点でタンパク質の構造変化を追跡した。得られた構造を解析したところ、主に4種類の中間体構造をとることがわかった。紫色のリボンで描かれた部分はタンパク質の主鎖を示す。構造の内部の青と黄色の部分は動く前の構造と比べて変化が起きたことを示し、黄色の部分にあった原子が青色の部分に移動したことを意味する。

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 http://dx.doi.org/10.1126/science.aah3497

    Eriko Nango, Antoine Royant, Minoru Kubo, Takanori Nakane, Cecilia Wickstrand, Tetsunari Kimura, Tomoyuki Tanaka, Kensuke Tono, Changyong Song, Rie Tanaka, Toshi Arima, Ayumi Yamashita, Jun Kobayashi, Toshiaki Hosaka, Eiichi Mizohata, Przemyslaw Nogly, Michihiro Sugahara, Daewoong Nam, Takashi Nomura, Tatsuro Shimamura, Dohyun Im, Takaaki Fujiwara, Yasuaki Yamanaka, Byeonghyun Jeon, Tomohiro Nishizawa, Kazumasa Oda, Masahiro Fukuda, Rebecka Andersson, Petra Båth, Robert Dods, Jan Davidsson, Shigeru Matsuoka, Satoshi Kawatake, Michio Murata, Osamu Nureki, Shigeki Owada, Takashi Kameshima, Takaki Hatsui, Yasumasa Joti, Gebhard Schertler, Makina Yabashi, Ana-Nicoleta Bondar, Jörg Standfuss, Richard Neutze, So Iwata. (2016). A three-dimensional movie of structural changes in bacteriorhodopsin. Science, 354(6319):1552-1557.

    • 京都新聞(12月24日 24面)、産経新聞(12月23日 22面)および日本経済新聞(1月16日 15面)に掲載されました。

    タンパク質中の原子の動き、自由電子レーザーにより動画撮影に成功 -光によって水素イオンを輸送する仕組みを解明-
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