研究成果

ニホンザルの甘味受容体がすごい -ヒトが感じられない麦芽糖の甘みにも敏感-


2016年12月26日


     西栄美子 霊長類研究所博士課程学生、今井啓雄 同准教授らの研究グループは、ニホンザルの甘味受容体の機能を評価する実験系を確立することに成功しました。行動実験と機能測定の結果から、ニホンザルはヒトでは甘みを感じられない程度の麦芽糖でもショ糖(スクロース)と同じくらいの甘みを感じることが分かりました。ヒトの甘味受容体の機能測定システムは外国の企業が特許を持っているため国内の企業が利用することが困難でしたが、今回開発したニホンザルの甘み受容体測定システムを利用することで、国内企業による新たな甘味料発見や応用につながることが期待されます。

     本研究成果は、2016年12月16日午後7時に英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

    研究者からのコメント

    左から、今井准教授、西博士課程学生

     大学院生の西さんが3年間かけて、やっとニホンザル受容体の甘味受容体の応答がとれるようになりました。石の上にも3年といいますが、新しい測定系の開発など研究には忍耐と工夫、そしてチャレンジが必要です。

     本測定系の開発により、さらに新奇の糖類の発見や甘味受容体の進化機構の解明が期待できます。

    概要

     甘味感覚は糖類等の炭水化物の指標として動物の味覚に備わっています。ヒトにとって最も甘いと感じられる糖類は果糖(フルクトース)やショ糖(スクロース)等であり、ブドウ糖(グルコース)やブドウ糖が二つくっついた麦芽糖(マルトース)は甘味が弱いとされてきました。

     本研究グループは、ニホンザルの甘味受容体(TAS1R2/TAS1R3)の機能測定系を確立することに成功した結果、ニホンザルはヒトが感じられない程度の麦芽糖の甘味もショ糖の甘味と同じくらいに感じることを示しました。また、行動実験の結果、ニホンザルは麦芽糖もショ糖と同程度に好むことを示しました。

     行動実験によりニホンザルが属するマカカ属のサルは麦芽糖の甘味をより感じられることが示唆されていましたが、今回の研究はこれを分子レベルで証明したことになります。マカカ属のサルがもつ頬袋の役割ともあわせて、霊長類の甘味感覚の進化に一石を投じる成果です。また、分子レベルで糖の認識に関与する部位を探索した結果、これまでに知られていた部位(TAS1R2の細胞外領域)以外にTAS1R3も糖の認識に関与している可能性が示されました。

    図:ショ糖溶液と麦芽糖溶液に対する甘味感受性比較.

    ヒトの甘味受容体(A)は10mM以上のショ糖溶液には応答を示したが、麦芽糖溶液には応答しなかった。一方ニホンザルの甘味受容体(B)は10mM以上のショ糖溶液と麦芽糖溶液に対し同程度の応答を示した。さらにニホンザル4個体に行った行動実験(C)でも甘味溶液と水を同時に提示した場合、甘味溶液摂取率(=甘味溶液摂取量/(甘味溶液+水)摂取量)は甘味溶液がショ糖溶液の時と麦芽糖溶液の時で同程度であった。

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 http://dx.doi.org/10.1038/srep39352

    【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/217687

    Emiko Nishi, Kei Tsutsui & Hiroo Imai. (2016). High maltose sensitivity of sweet taste receptors in the Japanese macaque (Macaca fuscata). Scientific Reports, 6:39352.

    • 朝日新聞(12月17日夕刊 8面)、京都新聞(12月17日 23面)、産経新聞(12月17日 26面)、中日新聞(12月17日 29面)および毎日新聞(12月21日 27面)に掲載されました。

    ニホンザルの甘味受容体がすごい -ヒトが感じられない麦芽糖の甘みにも敏感-
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