ミカンの親はどの品種? -遺伝解析により60種以上のカンキツ類の親子関係が明らかに-

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北島宣 農学研究科附属農場教授、清水徳朗 農研機構上級研究員、神沼英里 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所助教、中村保一 同教授、豊田敦 同特任教授、藤山秋佐夫 同特任教授らの研究グループは、15種のカンキツ類の全ゲノム配列を解読し、品種・系統269点について高度な遺伝解析を行った結果、60品種以上のカンキツ類の親子関係を明らかにしました。

本研究成果は、2016年12月1日午前4時に米国のオンラインジャーナル「PLOS ONE」に掲載されました。

研究者からのコメント

これまでに、東アジアや東南アジアの在来カンキツ約1000個体を調査し、それらの類縁関係の解明をすすめています。本研究により、インド東北部からアジアにわたる地域が起源と考えられている祖先品種が、世界各地へどのように伝来して現在のような多様な品種になったのかが明らかになると期待されます。さらに、未利用の品種との交配組合せの可能性を示すことで、優れた性質をもつ新しい品種の開発へ応用されることが期待できます。

概要

日本人にとって身近な食材であるカンキツ類には、温州ミカン、レモン、ユズなど多種多様な品種があります。それらの品種は少数の祖先品種の掛け合わせにより栽培品種として選抜されてきたと考えられています。しかしながらカンキツ類は遺伝的多様性に富んでいるため、これらの品種の親子関係はほとんどわかっていませんでした。

そこで本研究グループは、品種を特徴づけるDNAマーカー(生物個体や品種などを区別するために目印となる固有のDNA配列)を開発し、カンキツ類の遺伝解析を行いました。

その結果、温州ミカンをはじめとする22品種で両親となる品種を特定し、さらに、種子親と花粉親の組合せを明らかにしました。また、45の在来品種において片親や起源、親子関係を明らかにしました。

図:紀州ミカン、ユズ、ダイダイなどを親とする品種

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 http://doi.org/10.1371/journal.pone.0166969

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/217793

Tokurou Shimizu, Akira Kitajima, Keisuke Nonaka, Terutaka Yoshioka, Satoshi Ohta, Shingo Goto, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Takako Mochizuki, Hideki Nagasaki, Eli Kaminuma, Yasukazu Nakamura. (2016). Hybrid Origins of Citrus Varieties Inferred from DNA Marker Analysis of Nuclear and Organelle Genomes. PLOS ONE, 11(11): e0166969.