研究成果

血管収縮因子エンドセリンの受容体初期活性化機構を解明


2016年09月07日


     土井知子 理学研究科准教授、東京大学、名古屋大学らの研究グループは、血液循環において局所的な血流の調節を行っている血管収縮因子エンドセリンが細胞膜にあるエンドセリンB型受容体に結合している複合体の構造と、何も結合していない状態のエンドセリンB型受容体の構造を原子レベルで解明しました。この成果は、受容体の構造情報に基づいた高血圧症やがん、アルツハイマー病などに作用する副作用の少ない新たな薬剤の開発に資する成果です。

     また、本研究成果は2016年9月6日午前0時に英国科学雑誌Nature のオンライン速報版で公開されました。

    研究者からのコメント

    土井准教授、谷一寿 名古屋大学特任教授、志甫谷渉 同博士課程学生

     本研究では、構造を変化させて細胞外の情報を細胞内に伝えるGタンパク質共役 型受容体について、その構造変化の一部分を解明することができました。阻害剤結合 型や完全活性型構造についても研究して、受容体タンパク質の構造変化の全容を理解 したいと考えています。解明できた構造情報に基づいて、選択的に受容体を活性化あ るいは阻害できる小分子リガンド化合物を設計することは、副作用の少ない有効な新 規薬剤の開発を促進します。

     

    本研究成果のポイント

    • 血管収縮因子エンドセリンと結合した受容体の構造を解明
    • この受容体がエンドセリンと結合していない状態の構造も解明
    • これらの立体構造を基盤とする新たな薬剤の開発が期待される。

    概要

     ヒトはおよそ60兆個の細胞で構成され、細胞間の情報交換と協調によって正常な生命活動を維持することができます。細胞表面の細胞膜では、細胞外からのさまざまなシグナルを受け取り、各情報を細胞内へ伝えるために受容体タンパク質が働いており、創薬ターゲットとして重要視されています。細胞膜にある受容体タンパク質は、細胞外のシグナル分子を結合した時だけ細胞内へ情報を伝えますが、それぞれの情報伝達分子機構はまだ十分に解明できていません。

     今回、本研究グループは、血液循環において局所的な血流の調節を行っている血管収縮因子エンドセリンが細胞膜にあるエンドセリンB型受容体に結合している複合体の構造と、何も結合していない状態のエンドセリンB型受容体の構造を原子レベルで解明しました。

     これらの構造解析により、エンドセリンペプチドが受容体タンパク質にすっぽりとはまり込み、末端部分は受容体内部に潜り込んでしっかりと繋ぎ止められている様子が明らかになりました。また、エンドセリンと受容体は、多くの相互作用を形成することで高い親和性を得ていることが明らかになりました。さらに、何も結合していない受容体構造と比較すると、エンドセリンの結合に伴い、受容体の結合部位周辺がエンドセリンにフィットするように、よりコンパクトな構造に変化していることが明らかとなりました。

     これらの構造情報は、エンドセリンによる情報伝達の分子機構の理解を深めるとともに、立体構造を基盤とした高血圧症、がん、アルツハイマー病などに作用する副作用の少ない新たな薬剤の開発を促進すると考えられます。

     

    エンドセリンが受容体(青)と結合している複合体構造

    詳しい研究内容について

     

    書誌情報

    【DOI】
    http://dx.doi.org/10.1038/nature19319

    Wataru Shihoya, Tomohiro Nishizawa, Akiko Okuta, Kazutoshi Tani, Naoshi Dohmae, Yoshinori Fujiyoshi, Osamu Nureki & Tomoko Doi. (2016). Activation mechanism of endothelin ETB receptor by endothelin-1. Nature.

     

    • 京都新聞(9月6日 25面)、産経新聞(9月10日 25面)に掲載されました。
       

    血管収縮因子エンドセリンの受容体初期活性化機構を解明
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