初検出された重力波の起源は原始ブラックホール?-宇宙の始まりに迫る新理論-

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佐々木節 基礎物理学研究所教授、田中貴浩 理学研究科教授、須山輝明 東京大学理学系研究科助教および横山修一郎 立教大学理学部助教からなる研究チームは、最近米国を中心としたLIGO-Virgoチームにより重力波と共に発見された連星ブラックホールが、宇宙の誕生直後に形成した原始ブラックホールであるという新理論をまとめました。

本研究成果は、アメリカ物理学会発行の「Physical Review Letters」のオンライン版に2016年8月2日付で掲載されました。

研究者からのコメント

今後、重力波や宇宙マイクロ波背景放射の観測データがさらに蓄積してくることで、今回提唱したシナリオが正しいことを確認できれば、初期宇宙の理解が一段と深まると期待されます。

本研究成果のポイント

  • 最近の重力波初検出に伴って発見された連星ブラックホールは、宇宙ビッグバン直後に形成した原始ブラックホールであるという仮説を提唱した。
  • 謎として急浮上した連星ブラックホールの起源に、新しい切り口からの説明を与えた。
  • 今後の観測により、今回提唱した仮説が正しいと確かめられると、現代宇宙論に大きな1ページが加わる。

概要

原始ブラックホール連星自体は、90年代に盛んに議論されていましたが、その存在量に対しその後別の観測から上限が課されたため、ほとんど注目されていませんでした。

今回、原始ブラックホールの暗黒物質に占める割合が低いという状況の下で、連星ブラックホールの合体頻度を計算したところ、宇宙の暗黒物質の千分の一ほどを占めると仮定すると、予言される合体頻度が観測から決めた合体頻度と良く合うことが明らかになりました。

今後、観測データが蓄積すると、この理論を検証することが可能になると期待されます。

図:原始ブラックホール連星の合体頻度

暗黒物質における原始ブラックホールの占める割合(x軸)を変えたときの、原始ブラックホール連星の合体頻度(y軸)を表わす。x軸の値が千分の一辺りでは、今回導いた合体頻度がLIGO-Virgoチームが発表した合体頻度と合うことが分かる。

詳しい研究内容について

書誌情報


【DOI】
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.061101

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/216265

Misao Sasaki, Teruaki Suyama, Takahiro Tanaka and Shuichiro Yokoyama. (2016). Primordial Black Hole Scenario for the Gravitational-Wave Event GW150914. Physical Review Letters, 117: 061101.

  • 科学新聞(8月12日 4面)、京都新聞(8月3日 23面)に掲載されました。