研究成果

アルコール摂取と多発性の前がん病変が食道および頭頸部の扁平上皮がん発生を増加させる -禁酒・禁煙効果も含めて-


2016年08月25日


     武藤学 医学研究科教授らの研究グループは、食道扁平上皮がんの発生する予兆(前がん病変)とされる異型上皮の発生程度には、飲酒、喫煙、緑黄色野菜の摂取という三点が関連していることを明らかにしました。また、内視鏡治療を行った早期食道がん患者では、食道内の異型上皮の数が多いほど、食道内やのどの異時性多発がんの危険性が増すことが分かりました。加えて、禁酒によって食道がんの再発を抑制できることを世界ではじめて発見しました。

     本研究成果は、2016年8月1日に「Gastroenterology」に掲載されました。

    研究者からのコメント

     飲酒は百薬の長といわれ健康によいとされていますが、飲酒・喫煙をして緑黄色野菜を食べないと食道内の多発性の異型上皮(前がん病変)発生リスクが上昇することが分かりました。つまり、食道がんの予防には、禁酒・禁煙、そして緑黄色野菜を食べることによる効果が期待出来ます。また、食道がんは多発することが知られていますが、早期食道がんを治療した患者さんにおいて、実際に、禁酒ができた場合、異時性の食道発がんを抑制できることを世界ではじめて明らかにしました。この結果から、根治が期待出来る食道がん患者さんの治療後の生活指導の重要性がわかります。今後は、経過観察をさらに延ばすことで、他の臓器のがんの発生や、今回確認できなかった禁煙の効果などを見ていく予定です。

    概要

     食道がんは難治性がんの一つで、治療後の回復が困難な疾患です。食道がんには、過度な飲酒が主な原因とされる扁平上皮がんと胃酸逆流が関連するバレット腺癌の二つのタイプがあります。世界で最も多いタイプが扁平上皮がんで、日本人の食道がんの約90%を占めています。また、食道扁平上皮がんは食道内でのがん多発や頭頸部(のど)の扁平上皮がんの合併をひき起こすFiled cancerization現象(広域発がん現象)をもたらし、治療後に別の部位でがんが再発するため予後をさらに悪化させます。

     食道扁平上皮がんは前がん病変とされる異型上皮から発生すると考えられていますが、これまで異型上皮の程度と食道がん発生、そしてFiled cancerization現象との関連性は分かっていませんでした。また、がんの原因とされる飲酒をやめた場合の効果についても十分な検証がされていませんでした。

     そこで、本研究グループは、内視鏡治療された早期食道がん患者さん330人に協力いただき、治療後の経過中にどのくらいの期間で、どのくらいの割合で食道がんや頭頸部のがんが発生するかをみる追跡調査を行いました。また、全員に禁酒および禁煙指導を行い、禁酒・禁煙による発がん抑制効果も検討しました。また、本調査では食道内の異型上皮の程度を図のgrade A〜Cに分類し、異時性がんの発生を観察しました。

     その結果、以下の点を明らかにしました。

    • 前がん病変とされる異型上皮の発生には、飲酒、喫煙、緑黄色野菜を食べない、やせが関連する。
    • 食道内に多発性の異型上皮があると食道内多発がん、頭頸部がんの発生が高くなる。
    • 禁酒をすると、異時性の食道がん発生を約半分に減少させることができる。特に、食道内に多発性の異型上皮がある患者さんでは1/4に減少させることができる。一方、禁煙の短期的な効果は期待出来なかった。

     


     

    詳しい研究内容について

     

    書誌情報

    【DOI】
    http://dx.doi.org/10.1053/j.gastro.2016.07.040


    【KURENAIアクセスURL】
    http://hdl.handle.net/2433/216918

    Chikatoshi Katada, Tetsuji Yokoyama, Tomonori Yano, Kazuhiro Kaneko, Ichiro Oda, Yuichi Shimizu, Hisashi Doyama, Tomoyuki Koike, Kohei Takizawa, Motohiro Hirao, Hiroyuki Okada, Takako Yoshii, Kazuo Konishi, Takenori Yamanouchi, Takashi Tsuda, Tai Omori, Nozomu Kobayashi, Tadakazu Shimoda, Atsushi Ochiai, Yusuke Amanuma, Shinya Ohashi, Tomonari Matsuda, Hideki Ishikawa, Akira Yokoyama, and Manabu Muto. (2016). Alcohol Consumption and Multiple Dysplastic Lesions Increase Risk of Squamous Cell Carcinoma in the Esophagus, Head, and Neck. Gastroenterology.

     

    • 朝日新聞(11月30日 7面)、時事通信(8月24日)および毎日新聞(8月24日夕刊 8面)に掲載されました。

    アルコール摂取と多発性の前がん病変が食道および頭頸部の扁平上皮がん発生を増加させる -禁酒・禁煙効果も含めて-
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