研究成果

高齢者腎臓病の新たな病態メカニズムの発見・新規治療戦略の可能性を拓く


2016年07月22日


     柳田素子 医学研究科教授、佐藤有紀 同特定助教らの研究グループは、近年世界中で増加しており大きな社会問題となっている高齢者の腎臓病における新たな病態メカニズムを発見し、新たな治療戦略の可能性を見出しました。

     本研究成果は、2016年7月21日午後10時に米国科学誌「 Journal of Clinical Investigation Insight」のオンライン版で公開されました。

    研究者からのコメント

    左から柳田教授、佐藤特定助教

     本研究では、高齢者の腎臓病が若年者と比べて回復しにくい原因が、障害後の「3次リンパ組織」形成とそれに伴う修復の遅延であることを解明し、それに対する治療の可能性を見出しました。本研究の成果は高齢者腎臓病の新たな治療戦略の可能性を拓くものです。

    概要

     現在血液透析患者数は年々増加し、医療的にも社会的にも大きな問題になっています。透析導入に至る患者さんの平均年齢は67歳と高齢であり、今後さらなる高齢社会を迎える我が国にとって対策が急務となっております。

     以前より、高齢者の腎臓病は若年者と比べて治りにくいと言われていましたが、その原因は明らかではありませんでした。

     今回本研究グループは、高齢マウスの腎臓病では腎臓の中に「3次リンパ組織」(リンパ節のような組織)ができることで炎症が遷延し、腎臓が修復できなくなることを発見しました(図1)。さらに、その3次リンパ組織を除く治療をすれば高齢マウスでも腎臓が修復しやすくなり、予後が改善することも明らかにしました。

     また、ヒト高齢者の腎臓の3割近くにこの3次リンパ組織があること、その構成成分はマウスで解明したものと非常に似通っていることも見いだしました(図2)。

     本研究グループは以前健康な腎臓に存在する「線維芽細胞」の性質変化が腎臓の線維化と腎性貧血を引き起こすことを報告しました。今回の研究では、この線維芽細胞の振る舞いが加齢に伴って変化し、前述の3次リンパ組織を誘導することを突き止めました(図2)。

     本研究成果は、3次リンパ組織を標的とした治療法が高齢者の腎臓病の回復を促し、透析導入を遅延させる可能性を示唆するものであり、今後の研究の発展が期待されます。

     

     

    詳しい研究内容について

     

    書誌情報


    【DOI】
    http://dx.doi.org/10.1172/jci.insight.87680

    【KURENAIアクセスURL】
    http://hdl.handle.net/2433/216065


    Yuki Sato, Akiko Mii, Yoko Hamazaki, Harumi Fujita, Hirosuke Nakata, Kyoko Masuda, Shingo Nishiyama, Shinsuke Shibuya, Hironori Haga, Osamu Ogawa, Akira Shimizu, Shuh Narumiya, Tsuneyasu Kaisho, Makoto Arita, Masashi Yanagisawa, Masayuki Miyasaka, Kumar Sharma, Nagahiro Minato, Hiroshi Kawamoto and Motoko Yanagita. (2016). Heterogeneous fibroblasts underlie age-dependent tertiary lymphoid tissues in the kidney. JCI Insight, 1(11): e87680.

     

    • 朝日新聞(7月22日 33面)、京都新聞(7月22日 27面)、産経新聞(7月22日 10面)、毎日新聞(7月26日 25面)に掲載されました。

    高齢者腎臓病の新たな病態メカニズムの発見・新規治療戦略の可能性を拓く
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