京都大学MUレーダーで宇宙ごみの姿を捉える~観測波長より小さいスペースデブリのサイズやスピンの推定に成功~

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山川宏 生存圏研究所教授らの研究グループは、大気観測用のMUレーダーを用いた宇宙ごみ(スペースデブリ)の観測に成功しました。今回の観測手法を用いることで、観測精度の向上やスペースデブリ観測専用ではないレーダーを用いたスペースデブリの監視も期待されます。

本研究成果は、「日本航空宇宙学会論文集」6月号に掲載されました。

研究者からのコメント

山川教授

持続的な宇宙開発利用を進めるために、スペースデブリ問題への工学的対応に関して総合的に取り組む予定です。本研究の発展として、地上のレーダー観測装置によるスペースデブリの状態推定の精度向 上、および、軌道推定の精度向上を目指します。また、人工衛星に搭載した光学望遠鏡による軌道上から のスペースデブリの観測の可能性について検討します。さらに、10 cm 以下の微小スペースデブリの軌道 分布モデルの構築、スペースデブリの除去戦略や除去手法の研究を推進します。

概要

1957年に人類最初の人工衛星が打ち上げられて以降、数多くの人工衛星が打ち上げられてきました。これらの打ち上げに使用されたロケットの上段ステージや役割を終えた人工衛星などの機能を持たない人工天体はスペースデブリと呼ばれており、現在は、10 cm以上のデブリ2万個以上が確認されています。その飛行速度は秒速8 km 程度あり、わずか数 cm 程度の大きさでも運用中の国際宇宙ステーション、人工衛星などに大きな被害を引き起こします。

また、近年、デブリ同士の衝突によりデブリの総数が劇的に増加した事例があり、スペースデブリが連鎖的に自己増殖し続けるケスラーシンドロームと呼ばれる現象の発生が懸念されています。

今後、持続的な宇宙開発利用を進めるに当たり、スペースデブリ発生の抑制や除去、人工衛星等への接近や衝突の予測等、宇宙空間における環境への配慮が不可欠となっています。そのため、世界中の機関によって、地上に配置された光学望遠鏡やレーダー観測装置によって、定常的にデブリ観測が行われています。

本研究グループは、高度数百 km の地球周回軌道上にあるスペースデブリのうち、レーダー観測装置の波長と比較して、大きさが同程度以下のスペースデブリのサイズ、スピン、概形等の状態の推定をする観測手法を提案し、大型大気レーダーである京都大学生存圏研究所MUレーダー(周波数46.5 MHz 、波長6.45 m )を用いて、実際の観測に成功しました。

また、京都MUレーダ以外の様々なレーダー観測装置に、本研究の手法 を適用することで、デブリの総合的な観測能力を向上することが期待できます。

図:スペースデブリの観測方法

レーダーから送信された後、スペースデブリから後方散乱されるエコー(信号)を、レーダー観測施設にて取得し、信号処理を行うことによって、スペースデブリの状態を推定します。

詳しい研究内容について

  • 京都新聞((6月14日夕刊 8面)、産経新聞(6月6日夕刊 12面)に掲載されました。