甘味タンパク質の高甘味度化に成功 -低カロリータンパク質性甘味料の更なる有効利用に期待-

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桝田哲哉 農学研究科助教、フェデリコ2世ナポリ大学(イタリア)らグループの共同研究で、甘味タンパク質ソーマチンの21位のアスパラギン酸(D)をアスパラギン(N)に置換することにより、甘味度を強化(高甘味度化)することに成功しました。このソーマチンD21N変異体は、最も甘いタンパク質であるモネリンY65R変異体と同等の強い甘味を呈しました。

本研究成果は、2月3日付けで英国科学誌「Scientific Reports」誌(電子版)に掲載されました。

研究者からのコメント

桝田助教

甘味タンパク質は、強い甘味を呈するだけでなく、苦味や渋味の低減、風味を増強させるなどさまざまな機能を有しています。今後、原子レベルでの構造解析を通じてこれら諸要因を明らかにし、食品開発に利用できればと考えています。

概要

桝田助教、Temussi教授らのグループは、甘味タンパク質ソーマチンの21位のアスパラギン酸をアスパラギンに置換することにより、甘味度を強化(高甘味度化)することに成功しました。この知見により、甘味受容体と精度の高いドッキングシミュレーションを行うことが可能となり、その結果、

  1. ソーマチンは低分子甘味料とは異なる様式(Wedge model)で甘味受容体と相互作用すること
  2. ソーマチンの甘味に重要なアミノ酸残基は、受容体上のアミノ酸残基と電荷相補的な相互作用をすること
  3. 今回の21位のアミノ酸置換による高甘味度化は受容体との相互作用領域が大きくなった結果である可能性

を示唆しました。

本成果による受容体タンパク質との相互作用情報により、より受諾性のある新規低カロリー甘味料の創製をはじめ、甘味タンパク質を新たな食品素材として更なる有効利用が期待できます。また、高分子タンパク質と受容体とのドッキングモデルは、受容体をターゲットとする医薬品分野にも有用な知見を与えるものと考えられます。

ソーマチンと甘味受容体のドッキングシミュレーション

甘味受容体(T1R2-T1R3)を青色細線でソーマチンを黄色細線で示す。相互作用にかかわるソーマチン側のアミノ酸残基(R82、K67、K106、K137、K78)を青色太線で、受容体側のアミノ酸残基 (R2_D173、R2_D433、R3_E45、R3_E47、R3_D215)をピンクで示す。21位のアスパラギン酸をアスパラギンに置換(N21: 緑色太線)することにより青色点線で囲まれた領域に加え、新たに赤色点線で示す領域も相互作用に関わることで、高甘味度化に寄与すると考えられる。

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep20255
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/204388

Tetsuya Masuda, Keisuke Ohta, Naoko Ojiro, Kazuki Murata, Bunzo Mikami, Fumito Tani, Piero Andrea Temussi & Naofumi Kitabatake
"A Hypersweet Protein: Removal of The Specific Negative Charge at Asp21 Enhances Thaumatin Sweetness"
Scientific Reports 6, Article number: 20255, Published online: 03 February 2016

  • 京都新聞(2月4日 23面)、産経新聞(2月23日 27面)および日刊工業新聞(2月9日 24面)に掲載されました。