研究成果

ヒト体細胞がiPS細胞に変わる瞬間の可視化に成功 -新たに樹立されたヒト再プログラム化中間細胞株へのゲノム編集による創薬や病因解明に期待-


2016年01月06日


     多田高 再生医科学研究所准教授の研究グループは、ヒト体細胞からiPS細胞へ再プログラム化される中間段階にある幹細胞株、ヒトiRS(intermediately Reprogrammed Stem)細胞を新たに樹立しました。また、ゲノム編集技術を応用し、ヒトiRS細胞の内在性OCT4遺伝子の下流にGFPレポーター遺伝子を挿入することで、ヒトiRS細胞がOCT4陽性の幹細胞(iPS細胞)に変化する瞬間を生きた細胞で可視化する事に成功したことを明らかにしました。

     本研究成果は、英国科学誌「Development」誌の電子版にて公開されました。

    研究者からのコメント

    左から多田准教授、勅使河原利香 医学研究科博士課程学生

     今後はヒトiRS細胞がiPS細胞に再プログラム化される過程での遺伝子発現やエピジェネティクスの変化を解明します。また、ヒトiRS細胞のゲノム編集により、新たな遺伝子改変iPS細胞を作製します。

    概要

     ヒト体細胞のiPS細胞への再プログラム化は1万分の1以下の頻度でおこる再現性の低い現象であるため、分子機構の解明は難しい課題として残されています。また、iPS細胞は単一細胞からのクローニングが困難であり、ゲノム編集を含む遺伝子改変技術応用による疾患モデル細胞の作製や病因解明の検証の障害になっています。

     多田准教授らの研究グループは、ヒト体細胞とiPS細胞の再プログラム化の中間段階にある幹細胞株の樹立に成功し、この幹細胞株をiRS(intermediately Reprogrammed Stem)細胞と名付けました。ヒトiRS細胞は、培養条件を変えることで、iPS細胞への再プログラム化を再開する特性を持ちます。

     ヒトiRS細胞は、単一細胞からのクローニングが可能です。ゲノム編集により、内在性OCT4遺伝子の下流にGFPレポーター遺伝子を挿入することで、ヒトiRS細胞(OCT4発現オフ)がiPS細胞(OCT4発現オン)に変化する様子を生きた細胞で可視化する事に成功しました。また、OCT4の活性化はiPS細胞化に必要ですが十分ではない事も明らかにしました。

    iRS-iPS細胞再プログラム化における内在性OCT4活性の可視化

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1242/dev.130344

    Rika Teshigawara, Kunio Hirano, Shogo Nagata, Justin Ainscough and Takashi Tada
    "OCT4 activity during conversion of human intermediately reprogrammed stem cells to iPSCs through mesenchymal-epithelial transition"
    Development vol. 143 no. 1 pp. 15-23 Published online January 5, 2016

    関連リンク

     

    • 朝日新聞(1月6日 34面)、京都新聞(1月6日 24面)、産経新聞(1月6日 24面)、中日新聞(1月6日 27面)、日刊工業新聞(1月7日 27面)および日本経済新聞(1月6日 38面)に掲載されました。

    ヒト体細胞がiPS細胞に変わる瞬間の可視化に成功 -新たに樹立されたヒト再プログラム化中間細胞株へのゲノム編集による創薬や病因解明に期待-
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