研究成果

視覚認知において色と形の情報が統合される仕組み -位置に依存しない物体記憶の生成-


2016年01月04日


     齋木潤 人間・環境学研究科教授らの研究グループは、短期記憶内で物体の視覚特徴が統合されている証拠を初めて示しました。視覚記憶は外界の認知に不可欠な機能ですが、物体特徴の統合の仕組みは不明なままでした。本研究は、記憶課題中の反応時間分析と脳波解析を組み合わせることで、色と形の統合の仕組みに関する積極的な証拠を世界で初めて解明しました。

     本研究成果は、2015年12月28日午前9時(米国太平洋標準時)に、米国科学雑誌「Psychological Science」のオンライン版で公開されました。

    研究者からのコメント

     「特徴が統合された認知」は一見自明のようですが、そのメカニズムは未解明です。今回の知見は、この「結合問題」の解明に向けた一つの手がかりになると考えています。

    本研究成果のポイント

    • 視覚記憶における特徴統合の評価法を開発し、色と形の特徴の統合に関する明確な証拠を世界で初めて発見
    • 有力な理論の主張とは異なり、特徴統合された物体情報を位置に依存しない形で保持できることを明らかに
    • この成果の発展により、複雑な視覚情報の認知が必要な運転行動や機械操作の安全性向上、動きながら外界を認識するロボットビジョンシステムの高度化、ウェブページやスマホ画面を用いた複雑な視覚情報の効率的な伝達に役立つ手がかりを提供

    概要

     私たちは外界の事物を認識する際、色や形をバラバラの特徴ではなく、ひとつの物体として認識していると感じています。しかし、視覚情報処理の初期段階では、物体を構成する各特徴は独立に処理されていることが知られており、物体特徴が脳の中で統合される仕組みは認知科学における未解明の問題の一つです。知覚においては、位置を共有する特徴が統合されると考えられていますが、統合された特徴が記憶の中で保持される仕組みは不明なままでした。

     このような特徴が統合された物体記憶は外界の認知に有効と考えられますが、従来の視覚性ワーキングメモリ研究では、むしろ特徴が独立に保持されるという知見が優勢でした。そこで、記憶内の特徴統合の明確な証拠を提出することを本研究の第一の目的としました。また、特徴統合の記憶における位置の役割を検討しました。結合問題に関する有力な理論であるオブジェクトファイル理論では位置情報が不可欠と主張されており、この理論の妥当性を評価しました。

     解析の結果、以下のことが明らかになりました。

    1. 記憶の符号化時には位置を共有する特徴のみが統合される。
    2. 統合された色と形は、記憶保持中に位置に関係なく利用できるようになる。

     つまり、視覚情報を記憶に符号化する際は、位置の共有によって特徴が統合されるが、記憶に保持されている間に位置に依存しない表現が生成されるということを示しています。

    色と形態の統合(上)と位置の共有効果(下)に関連した脳波成分の頭皮上分布と時間変化。条件間の差分波形を表示。頭皮上分布は、グレーの部分の時間帯の活動(N400成分、300から450ミリ秒)を表示。特徴統合は前頭部、位置共有効果は頭頂、後頭部にそれぞれピークを持つ。

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1177/0956797615616797
    [KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/202916

    Jun Saiki
    "Location-Unbound Color-Shape Binding Representations in Visual Working Memory"
    Psychological Science, Published online before print: December 28, 2015

    • 京都新聞(1月20日 25面)に掲載されました。

    視覚認知において色と形の情報が統合される仕組み -位置に依存しない物体記憶の生成-
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