研究成果

生命科学分野のスター研究者におけるサイエンス・リンケージの計量経済学的分析


2015年12月14日


     依田高典 経済学研究科教授、福澤尚美 文部科学省科学技術・学術政策研究所研究員らの研究グループは、大学の優れた研究成果が学術界でどのように評価され、特許化やライセンシングを通じて、産業界でどのように応用されるかといった学術の研究成果と産業の研究開発のつながり(「サイエンス・リンケージ」)の計量経済学的解明をしました。

     この研究成果は、国際学術雑誌「Scientometrics」誌に掲載されることになりました。

    研究者からのコメント

    依田教授

     大学の優れた研究成果が学術界でどのように評価されるか。そして、特許化やライセンシングを通じて、産業界でどのように応用されるか。このような学術の研究成果と産業の研究開発のつながりを「サイエンス・リンケージ」と呼びます。このサイエンス・リンケージの計量経済学的解明は、未だ十分になされてきませんでした。我々は大規模な論文・特許被引用データベースを構築し、生命科学分野の研究者トップ100について、このサイエンス・リンケージが存在することを定量的に検証しました。

    概要

     大学の優れた研究成果が学術界でどのように評価されるか、そして、特許化やライセンシングを通じて、産業界でどのように応用されるかといった学術の研究成果と産業の研究開発のつながりを「サイエンス・リンケージ」と呼びます。これまで、サイエンス・リンケージの計量経済学的解明は、未だ十分になされてきませんでした。

     そこで、本研究グループは日本の生命科学・医学系分野のトップ研究者100名を対象とし、学術論文から論文への被引用数、特許への被引用数を抽出しました。具体的には、21世紀COEプログラムの生命科学と医学系分野に採択された研究者からデータを作成しました。そして、エルゼビア社Scopusを使用して論文数、引用数データを作成し、総被引用数が多い順でトップ 100名の研究者を抽出しました。

     論文から論文への被引用数が多いトップ10論文に注目すると、山中伸弥 iPS細胞研究所長・教授がCellに2006年に発表した論文の引用数が最も多く、2,670回引用されています。また、論文から特許への被引用数が多いトップ10論文に注目すると、山中教授がCellに2007年に発表した論文の被引用数が最も多く、414回引用されています。同じ研究者が数回登場しており、数名のトップ研究者が、サイエンス・リンケージを牽引していることが示唆されます。

     論文-特許被引用と論文-論文被引用の関係を見るために、被説明変数には論文-特許被引用数、説明変数には論文-論文被引用数を使用して回帰分析しました。その結果、論文から論文への被引用数が100増えると、特許への被引用数は3.6増えて、論文-論文被引用数は論文-特許被引用数と正に有意な関係があり、学術界で質が高い論文は特許にもより多く引用されることが分かりました。


    学術界から産業界へのサイエンス・リンケージ -生命科学分野のスター研究者における論文・特許の被引用分析-

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1007/s11192-015-1795-z

    Naomi Fukuzawa, Takanori Ida
    "Science linkages between scientific articles and patents for leading scientists in the life and medical sciences field:the case of Japan"
    Scientometrics, First online: 26 November 2015

     

    • 京都新聞(12月15日 32面)および産経新聞(12月15日夕刊 10面)に掲載されました。

    生命科学分野のスター研究者におけるサイエンス・リンケージの計量経済学的分析
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