研究成果

植物を支える「共生ネットワーク」は地上と地下で構造が違う -見えてきた地下生物圏の構造-


2015年10月26日


     東樹宏和 人間・環境学研究科助教を中心とする国際共同研究チーム(京都大学、ブラジル・サン・パウロ大学、デンマーク・オーフス大学、米・カリフォルニア大学)は、植物と動物や植物と真菌類(きのこ・かび類)が構成する「共生関係のネットワーク」に着目し、植物をとりまく共生ネットワークの構造が地上と地下で根本的に異なっていることを発見しました。

     本研究成果は、米国科学誌「Science Advances」誌に掲載されました。

    研究者からのコメント

    東樹助教

     この研究の背景には、「無数のきのこやかびたちが繰り広げる地下の世界をのぞいてみたい」という基礎科学的な欲求があります。その一方で、「基礎科学上の発展は応用科学の新たな土台を作る」という期待も込められています。地球規模で進行する資源の枯渇や耕作不適地の拡大に対処するためには、生態系の動態を根本から理解し、その知見を自然生態系の再生や農業生態系の設計に活かしていくことが必要になります。こうした問題に基礎科学上の枠組みづくりから取り組むのは遠回りなのかもしれませんが、科学者の考え方にも多様性があってよいのではないかと思います。

     この研究成果は育児休業を挟んで発表に漕ぎ着けました。支えていただいた職場の方々に感謝するとともに、国立大学における男性の育児休業取得率が今後向上していくことを願っています。

    概要

     無数の生物が関わり合って構成される生物群集や生態系は、科学が対象とするシステムのなかでもとりわけ複雑なもののひとつです。特に地下の生物圏内では、地上の生物圏と比べてさらに多様な生物たちが生息しており、地下生態系の動態を理解することは、科学上の大きな挑戦といえます。

     東樹助教を中心とするグループは、DNA情報に基づいて生物の名前を特定するDNAバーコーディングという技術で得られたデータを大量に解析し、植物とその根に共生する真菌(きのこ・かび類)で構成される「共生ネットワーク」の構造を解明しました。この地下における植物-真菌ネットワークを、従来研究されてきた地上の植物-動物ネットワークと比較したところ、その基本構造に根本的な違いがあることが判明しました。

     本研究成果は、生態系内における植物とその共生者たちとの関係性に関して、地上と地下ではその動態が異なっていることを示唆 します。また、土のなかの生物圏の構造を網羅的に明らかにする本研究の手法は、土壌を対象とするさまざまな応用科学分野に新たな視点を提供していくと期待されます。

    植物と共生真菌で構成される地下のネットワーク構造

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1126/sciadv.1500291

    [KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/200782

    Hirokazu Toju, Paulo R. Guimarães Jr., Jens M. Olesen, John N. Thompson
    "Below-ground plant–fungus network topology is not congruent with above-ground plant–animal network topology"
    Science Advances (23 Oct 2015): Vol. 1, no. 9, e1500291


    植物を支える「共生ネットワーク」は地上と地下で構造が違う  -見えてきた地下生物圏の構造-
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