DNAオリガミの2次元自己集合化に成功 -ナノ~マイクロ空間での自在な分子配置も可能に-

ターゲット
公開日

遠藤政幸 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)准教授、鈴木勇輝 理学研究科特定研究員、杉山弘 iCeMS・理学研究科教授の研究グループは、DNAからなる平面構造体を脂質二重膜上で自己集合化させることで、さまざまなパターンのDNA自己集合体を作成する手法を開発しました。この成果は、メゾスコピックな分子構造体の自己集合化の新たなメカニズムを提唱するもので、自在な分子の結晶化にも用いることができると期待されます。

本研究成果は、2015年8月27日(ロンドン時間)に英国科学誌「Nature Communications」誌のオンライン速報版で公開されました。

研究者からのコメント

左から鈴木特定研究員、遠藤准教授、杉山教授

DNAオリガミからマイクロメーターサイズのさまざまな2次元集合体を作成する方法を確立しました。DNAオリガミには多彩な生体分子を配置できますので、超高密度のバイオセンサーなどの分子デバイスに応用が期待できます。

概要

DNAオリガミと呼ばれる約100nmのDNA平面構造を人工脂質二重膜表面に吸着・濃縮し、2次元自己集合化させることで、多様な空間パターンのDNA 自己集合体を設計・創出する手法を開発しました。また、DNAオリガミ構造体が脂質二重膜上で自己集合していく過程を高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用 いて、実時間で可視化することにも成功しました。さらにDNAオリガミの性質と集合体の周期性を利用して、あらかじめ指定した位置にタンパク質分子を規則 的に配置することに成功しました。本研究成果は、さまざまなボトムアップ型ナノテクノロジーの基盤技術となるもので、ナノデバイスの集積化・組織化や新規 分子デバイス構築などへの展開が期待されます。

脂質二重膜を利用したDNAオリガミ構造体の2次元自己集合。(A) AFMの観察基板であるマイカ上に脂質二重膜を作成し、静電的な相互作用によってDNAオリガミ構造体を吸着後、脂質膜上での拡散を利用して、マイクロメーターサイズのさまざまな2次元集合体を構築した。(B)十字型DNAオリガミ構造体からの形成した格子構造とそのAFM画像 (左):平滑末端のπ-π相互作用を利用して自己集合した。π-π相互作用を阻害した状態での十字型(中左)、三角形(中右)、六角形(右)の形に依存した最密充填(パッキング)によるDNAオリガミ構造体の自己集合とそのAFM画像

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9052

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/199673

Yuki Suzuki, Masayuki Endo & Hiroshi Sugiyama
"Lipid-bilayer-assisted two-dimensional self-assembly of DNA origami
nanostructures"
Nature Communications 6, Article number: 8052 Published 27 August 2015