研究成果

胚成長と連動する管組織形成メカニズムの解明 -臓器不全治療や再生医療に期待-


2015年07月03日


     高橋淑子 理学研究科教授(理事補)らの研究グループは、胚発生の過程で管組織がどのように形成されるかについて研究し、FGF8という分泌蛋白質が重要な働きをもつことを見出しました。FGF8は胚内で濃度勾配をつくり、管の先端細胞が濃度の高い方へと向かって動く一方で、濃度が低いところでは細胞は上皮化をおこして安定な管構造を作ることがわかりました。さらに重要なこととして、FGF8の濃度勾配は胚全体の成長に連動して後方にシフトするために、管が胚の成長と同じ速度で伸長することを見出しました。ミクロ(管組織形成)とマクロ(体全体の成長)との連動メカニズムの発見です。

     本研究成果は、6月30日(英国時間)付けにて、英国生物学専門誌「Development」誌に掲載されました。

    研究者からのコメント

    高橋教授、熱田勇士 理学研究科特定研究員

     生きた胚の中でまっすぐ伸びる腎管を見たときは、「これは使える!」とひらめきました。実際に研究を始めると、管細胞の「息づかい」が聞こえてきました。遺伝子-細胞-組織-全身を俯瞰することの重要さを痛感しました。

    概要

     私達のほぼすべての臓器は、さまざまな管組織(管上皮)で埋め尽くされています。そしてこれらの管上皮が臓器の生理機能を発揮する上で非常に重要な役割を担います。管上皮形成の異常が、さまざまな臓器不全につながると想像されますが、そもそも管上皮の形成がどのようなメカニズムによって制御されているか、これまでほとんどわかっていませんでした。

     本研究グループは、生きたままの胚内で組織形成を詳しく調べることができるニワトリ胚を材料に用いて、腎管とよばれる管をモデル系としてこの問題に取り組みました。結果、FGF8とよばれる分泌因子(蛋白質)が、伸びる管の先端細胞を誘引することがわかりました(図)。その一方で、FGF8が作用しないと、腎管細胞は積極的に上皮化をおこして、安定な管構造を作りました。つまり、FGF8の濃度勾配が細胞のふるまいを決めていたのです。さらに深く解析したところ、FGF8の勾配はある場所に固定されたものではなく、発生と共にその位置を変えることがわかりました。この勾配シフトに従って腎管の伸長が決まる、つまり胚成長と腎管伸長が同じスピードで進むということがわかりました。


    人工的に与えたFGF8(緑)によって誘引される、腎管の先端細胞(赤)

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1242/dev.122408

    [KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/198701

    Yuji Atsuta and Yoshiko Takahashi
    "FGF8 coordinates tissue elongation and cell epithelialization during early kidney tubulogenesis"
    Development 142, pp. 2329-2337 July 1, 2015

     

    • 京都新聞(7月1日 27面)および産経新聞(7月11日 21面)に掲載されました。

    胚成長と連動する管組織形成メカニズムの解明 -臓器不全治療や再生医療に期待-
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