研究成果

蜘蛛の糸の十分の1の細さのガラス糸を用いた、光を効率良く吸い取るナノデバイスを実現 -量子情報通信への応用に期待-


2015年05月20日


     竹内繁樹 工学研究科教授、Schell Andreas 同特任研究員、高島秀聡 同特任研究員らは、光ファイバの一部を直径300nm(蜘蛛の糸の十分の1の細さ)の細さにまで引き延ばしたナノ光ファイバに、光の共振器構造を組み込んだデバイスを実現し、このデバイスを用いて、単一発光体からの光を高効率で光ファイバに結合できることを実証しました。

     本研究成果は、日本時間2015年5月6日午後6時(英国時間2015年5月6日午前10時)、英国科学誌「Scientific Reports」誌に掲載されました。

    研究者からのコメント

     最初の着想から7年を経て、実現した研究です。分子や量子ドットなどの単一発光体からの光子を、大型の顕微鏡等を一切使わずに、より高い効率で光ファイバへ導くことが可能になり、検査装置等の超小型化、低コスト化などにも貢献できるのではないかと思っています。

     私たちは、光量子コンピュータへの応用を目指していますが、ご興味の有る方はぜひご連絡いただければと存じます。

    概要

     光は、光子の集まりで出来ています。近年、この光子を自在に制御することで、盗聴不可能な通信を実現する量子暗号通信や、既存のコンピュータでは解けない問題を解く量子コンピュータの実現に向けた研究が進められています。そこで鍵となるのが、光子を制御するためのデバイスです。特に、人工原子などの単一発光体から発生した光子を、光子の通路である単一モード光ファイバへと結合することは非常に重要な課題でした。

     本研究グループは、さまざまな実証研究の結果から、光共振器内蔵ナノ光ファイバにより、単一発光体からの発光が、微小光共振器の効果でさらに効率よく光ファイバに結合出来ていることを実証しました。

     今回の成果と従来の報告から、共振器の共鳴波長にのみ発光する単一発光体を用いた場合、今回実現したデバイスにより、発光の50%以上を単一モード光ファイバへと結合できると推定されます。この効率は、共振器の性能を高めることにより、理論的には限りなく100%へと近づけることが可能となります。

     量子暗号通信や光量子コンピュータなどの実現にむけた最大のボトルネックである、100%に近い効率で光子を発生する、オンデマンド単一光子源の実現にむけた大きなステップと考えられます。また、逆に光子を高い効率で単一発光体へ結合できるため、光子の量子状態を、電子スピンの状態に変換して記録する光量子メモリなどの実現も期待されます。 また、発光体としては、分子や蛍光蛋白質などさまざまな物質を結合可能です。このため、例えば抗体などの生体物質を非常に低濃度で、かつ、顕微鏡などの大がかりな装置を利用せずに検出可能なシステムへの応用なども考えられます。


    実現した、微小共振器内蔵のナノ光ファイバ。a.模式図 b.作成したデバイスの、走査イオン像(SIM)。白い線は、1μm(千分の1mm)。ナノ光ファイバの直径は270nm

    詳しい研究内容について

    蜘蛛の糸の十分の1の細さのガラス糸を用いた、光を効率良く吸い取るナノデバイスを実現 -量子情報通信への応用に期待-

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep09619

    [KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/197939

    Andreas W. Schell, Hideaki Takashima, Shunya Kamioka, Yasuko Oe,
    Masazumi Fujiwara, Oliver Benson & Shigeki Takeuchi
    "Highly Efficient Coupling of Nanolight Emitters to a Ultra-Wide Tunable
    Nanofibre Cavity"
    Scientific Reports 5, Article number: 9619 Published 06 May 2015


    蜘蛛の糸の十分の1の細さのガラス糸を用いた、光を効率良く吸い取るナノデバイスを実現 -量子情報通信への応用に期待-
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