研究成果

加齢黄斑変性の発症に関わるアジア人特有の遺伝子変異を発見


2015年02月05日


     吉村長久 医学研究科教授、山城健児 同講師らの研究グループは、シンガポール国立大学、香港中文大学、ソウル国立大学等の研究者らと共同研究(The Genetics of AMD in Asians [GAMA] Consortium)を行い、加齢黄斑変性の発症に関わるアジア人特有の遺伝子変異を発見しました。

     本研究成果は、2015年1月28日に「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。

    研究者からのコメント

     加齢黄斑変性は先進国での中途失明原因1位の疾患で、日本でも近年急速に増加してきています。数種類の治療薬が欧米で開発されてきましたが、欧米人とアジア人では加齢黄斑変性の特徴が異なっているため、アジア人特有の加齢黄斑変性の原因を知る必要がありました。本研究では、アジア人にしか見られない遺伝子変異によって加齢黄斑変性が発症しやすくなることが発見できました。アジア人の加齢黄斑変性により効果的な治療薬の開発につながる発見だと考えています。

    概要

     加齢黄斑変性は、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなる病気です。その治療法として最近では患者iPS細胞から分化させた網膜色素上皮細胞の移植で注目を集めていますが、先進国での中途失明原因1位の疾患で、日本でも近年急速に増加してきています。iPS細胞を用いた治療が現実的なものになるまでには、まだ10年以上の年月が必要で、それまでは従来用いられている治療薬に頼った治療を続ける必要があります。しかし、現在主に用いられている治療薬はすべて欧米で開発されたものであり、欧米人患者とアジア人患者ではその治療効果に差があることは良く知られています。

     アジア人の加齢黄斑変性を予防・治療するためには、アジア人特有の原因を理解する必要があります。そこで本研究グループは、シンガポール、韓国、香港、中国本土の研究施設と共同で、2万人以上の遺伝子情報を解析することによって、加齢黄斑変性の発症に関わるアジア人特有の遺伝子変異を四つ発見しました。

     その中でもコレステリルエステル転送蛋白(CETP)遺伝子の中にみつかった変異は、アジア人にしか見られない遺伝子変異で、血液中の高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール濃度を変化させます。今後さらに研究を続けることによって、アジア人の加齢黄斑変性に対して非常に良く効く治療薬が開発されるかもしれません。


    図:ゲノムワイド関連解析結果(マンハッタンプロット)

     

    詳しい研究内容について

    加齢黄斑変性の発症に関わるアジア人特有の遺伝子変異を発見

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1038/ncomms7063

    [KURENAI]http://hdl.handle.net/2433/210236

    Ching-Yu Cheng, Kenji Yamashiro, Li Jia Chen, Jeeyun Ahn, Lulin Huang, Lvzhen Huang, Chui Ming G. Cheung, Masahiro Miyake, Peter D. Cackett, Ian Y. Yeo, Augustinus Laude, Ranjana Mathur, Junxiong Pang, Kar Seng Sim, Adrian H. Koh, Peng Chen, Shu Yen Lee, Doric Wong, Choi Mun Chan, Boon Kwang Loh, Yaoyao Sun, Sonia Davila, Isao Nakata, Hideo Nakanishi, Yumiko Akagi-Kurashige, Norimoto Gotoh, Akitaka Tsujikawa, Fumihiko Matsuda, Keisuke Mori, Shin Yoneya, Yoichi Sakurada, Hiroyuki Iijima, Tomohiro Iida, Shigeru Honda, Timothy Yuk Yau Lai, Pancy Oi Sin Tam, Haoyu Chen, Shibo Tang, Xiaoyan Ding, Feng Wen, Fang Lu, Xiongze Zhang, Yi Shi, Peiquan Zhao, Bowen Zhao, Jinghong Sang, Bo Gong, Rajkumar Dorajoo, Jian-Min Yuan, Woon-Puay Koh, Rob M. van Dam, Yechiel Friedlander, Ying Lin, Martin L. Hibberd, Jia Nee Foo, Ningli Wang, Chang Hua Wong, Gavin S. Tan, Sang Jun Park, Mayuri Bhargava, Lingam Gopal, Thet Naing, Jiemin Liao, Peng Guan Ong, Paul Mitchell, Peng Zhou, Xuefeng Xie, Jinlong Liang, Junpu Mei, Xin Jin, Seang-Mei Saw, Mineo Ozaki, Takanori Mizoguchi, Yasuo Kurimoto, Se Joon Woo, Hum Chung, Hyeong-Gon Yu, Joo Young Shin, Dong Ho Park,In Taek Kim, Woohyok Chang, Min Sagong, Sang-Joon Lee, Hyun Woong Kim, Ji Eun Lee, Yi Li, Jianjun Liu, Yik Ying Teo, Chew Kiat Heng, Tock Han Lim, Suk-Kyun Yang, Kyuyoung Song, Eranga N. Vithana, Tin Aung, Jin Xin Bei, Yi Xin Zeng, E. Shyong Tai, Xiao Xin Li, Zhenglin Yang, Kyu-Hyung Park, Chi Pui Pang, Nagahisa Yoshimura, Tien Yin Wong & Chiea Chuen Khor
    "New loci and coding variants confer risk for age-related macular degeneration in East Asians"
    Nature Communications 6, Article number: 6063 Published 28 January 2015

    掲載情報

    • 京都新聞(1月29日 26面)および日本経済新聞(1月29日夕刊 16面)に掲載されました。

    加齢黄斑変性の発症に関わるアジア人特有の遺伝子変異を発見
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