スマトラ大津波の復興10年の記録をスマホ・アプリで公開 -日本とインドネシアを結ぶ防災教育・津波ツーリズムへの活用に期待-

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山本博之 地域研究統合情報センター准教授と 西芳実 同准教授は、12月26日の被災10周年記念式典にあわせて、スマトラの大津波の被災と復興の10年を記録したデジタルアーカイブを、防災教育や津波ツーリズムに使える三つのスマートフォン・アプリでインドネシアと日本で同時公開します。

今後、(1)日本での事前学習、(2)被災地での実地学習、(3)日本とインドネシアを結ぶ防災コミュニティづくりへの活用が期待されます。

研究者からのコメント

左から山本准教授、西准教授

今回公開する三つのアプリは、被災から長い時間が経過し、街の景観から被災の痕跡が失われ、被災の経験者が高齢化する中で、被災と復興の経験と記憶を世代と地域を越えてどのように継承し、社会で共有していくかという課題に取り組むものです。

これらのアプリを活用することで、日本で復興や防災に取り組む人々にとって、2004年のスマトラ大津波の被災と復興の経験がより学びやすくなることが期待されます。津波遺構を積極的に残して、防災研究や災害ツーリズムに活用しようとしているアチェの経験は、日本の被災地における防災教育や災害ツーリズムを実践する際の一つのモデルとなります。

アプリはいずれも日本語とインドネシア語の二か国語で制作されており、日本とインドネシアの両国で使用することが可能です。日本とインドネシアの防災分野の国際協力を推進する上で、手軽に災害経験を共有するツールとして活用されることが期待されます。また、観光ビザの緩和などによる東南アジアから日本への観光客の増加が見込まれる中で、災害多発国であるインドネシアと日本の民間交流においても防災を共通の話題とすることを助けます。

概要

本研究グループはこれまで、地域研究と情報学の組み合わせにより、スマトラの大津波の発災以来、被災地であるインドネシア共和国アチェ州で、被災と復興過程の調査・研究を継続的に行ってきました。現地の関係諸機関(公文書館、州政府、インドネシア赤十字ほか)の要請を踏まえて、被災と復興を記録するデジタルアーカイブを作成・公開してきたほか、2011年には地域研究統合情報センターがシアクアラ大学津波防災研究センター(アチェ州)と学術交流協定を結び、防災分野における日本とインドネシアの国際協力に取り組んできました。今回のアプリの制作・公開は、これらの取り組みをもとに、成果を広く日本・インドネシア両国の社会に還元するためのものです。

今回、公開されるアプリは以下のとおりです。

  1. 「アチェ津波アーカイブ(Android/iOS)」
    津波災害を生き延びた被災者の証言をデジタル地球儀上で表現したアプリ。津波遡上高や被災直後の写真記録などと合わせて閲覧でき、空間的な広がりを体感しながら被災の概況と被災体験を知ることができる。首都大学東京の渡邉英徳研究室との共同開発
  2. 「アチェ津波モバイル博物館(Android)」
    被災と復興の10年にわたる景観の経年変化を示す画像資料を収蔵。AR表示機能により、位置情報をもとに、現在地周辺の過去の景観を現在の街並みと重ねて見ることができる。モバイル端末を使って町全体をオープン博物館にする取り組み
  3. 「アチェ津波被災地メモリーハンティング(Android)」
    カメラのファインダー上に過去の風景画像を半透明で重ねることで、過去の画像と同じ構図で現在の風景を撮影し、その画像を他のモバイル端末と共有できるアプリ。被災と復興による町の景観の変化を記録できるだけでなく、現在の街並みに至る歴史を共有するコミュニティづくりを助ける。国立情報学研究所の北本朝展准教授との共同開発


今回開発されたアプリイメージ

左から、メモリーハンティング、過去の風景画像、メモリーハンティングで撮影した写真

詳しい研究内容について

スマトラ大津波の復興10年の記録をスマホ・アプリで公開 -日本とインドネシアを結ぶ防災教育・津波ツーリズムへの活用に期待-

掲載情報

  • 朝日新聞(12月10日夕刊 6面)、産経新聞(12月22日 22面)、中日新聞(12月14日 38面)および日本経済新聞(12月14日 34面)に掲載されました。