研究成果

後悔感情から高校生の自律的な動機づけの獲得プロセスに迫る


2014年11月28日


     楠見孝 教育学研究科教授と後藤崇志 同博士課程学生は、高校生を対象とした縦断調査を行い、後悔感情と自律的な動機づけの獲得との関連を検討しました。その結果、自律的な動機づけの獲得には、いつ、どのようなことに対して生じた後悔かによって、異なる影響が見られることを見出しました。

     本研究成果は、2014年11月15日に、心理学の国際学術誌「Learning and Individual Differences」の電子版で公開されました。

    研究者からのコメント

     本研究では、自律的な動機づけの獲得に寄与するのは、出来事の直後に生じる後悔であるという結果が得られました。この結果は、自律的な動機づけの獲得と意思決定に関わる学習との間に、類似した心理プロセスがある可能性を示唆するものだと考えています。今後の研究では、自律的な動機づけの獲得に関わる心理プ ロセスの理解を深め、人に備わっている成長傾向をうまくサポートできるような教育方策につなげることを目指したいと考えています。

    概要

     心理学における「動機づけ」とは、一般に「やる気」と言われるものを指す概念です。やる気の有無として現れる動機づけの量的な違いだけでなく、自律的動機づけ(自ら選んでやっている)や統制的動機づけ(やらされているからやっている)として現れる動機づけの質的な違いも成功の鍵を握るものとして考えられています。これらの動機づけの質的な違いは二分されたものではなく、連続的なものとして考えられており、始めは統制的に動機づけられていた活動であっても、その活動の価値を認めるようになることで、自律的に動機づけられるようになると考えられています。しかしながら、内在化(internalization)と呼ばれる、このような自律的な動機づけの獲得を支える心理プロセスは明らかではありませんでした。

      そこで本研究グループでは、意思決定において活動の価値の調整に関わる後悔(regret)感情が動機づけの内在化に関与していると考え、質問紙を用いた縦断的研究を行いました。具体的には、県立高校の高校1年生を対象に、2度の定期考査を挟んで複数回の質問紙調査を行い、定期考査の前の勉強への動機づ けと、定期考査の直後や時間が経った後に感じていた「もっと勉強しておけばよかった」「もっと自分の楽しめることをしておけばよかった」という異なる種類の後悔との関連を検討しました。その結果、後悔は動機づけの内在化に影響しますが、その影響の仕方はいつ、どのようなことに対して生じた後悔かによって異なることが示されました。


    図:動機づけの自律性と後悔感情の時間的な関係性

     

    詳しい研究内容について

    後悔感情から高校生の自律的な動機づけの獲得プロセスに迫る

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1016/j.lindif.2014.11.013

    Takayuki Goto, Takashi Kusumi
    "The effects of regret on internalization of academic motivation : A longitudinal study"
    Learning and Individual Differences Available online 15 November 2014


    後悔感情から高校生の自律的な動機づけの獲得プロセスに迫る
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