研究成果

糖尿病患者の心の負担に日本人特有の要因の存在 -協調性を重視する文化の影響-


2014年10月16日


     池田香織 医学部附属病院特定助教と稲垣暢也 医学研究科教授らは、内田由紀子 こころの未来研究センター特定准教授、藤本新平 高知大学医学部教授、Beth Morling アメリカDelaware大学准教授と共同で日米の糖尿病患者の調査を行い、アジア文化で特徴的な協調性の重視が、糖尿病患者の心の負担を増す要因となっていることを明らかにしました。

     本研究成果は、2014年10月15日午後2時(アメリカ東部時間)に「PLOS ONE」で公開されます。

    研究者からのコメント

    左から池田特定助教、内田特定准教授

     協調性を重視する程度や周囲からの心のサポートの効果には個人差も大きく存在しますが、日本などアジアの国では周囲の他者との調和を重んじる相互協調性の高い文化や社会が形成されています。このことを考慮に入れた治療戦略を確立することで、多くの糖尿病患者の心の負担の軽減や、その結果としての治療の成功にも貢献することが期待されます。

     今回の知見をもとに、日本人糖尿病患者において効果的な療養方法を探る研究を実施しており、より具体的な療養方法の開発につなげることを目指しています。

    概要

     糖尿病の治療の目標は、血糖値の改善とともに、健康な人と変わらない生活の質を保つことです。糖尿病の治療では食事療法や運動療法などを日常生活の中に取り込む必要が生じますが、これを成功に導くための手法はまだ十分整っていません。文化・社会心理学の研究成果から、人の行動の動機に個人の意思や能力の影響が大きい北米と異なり、アジアでは周囲との関係による影響が大きいことが明らかになってきました。

     そこで池田特定助教らは、生活習慣の変容を求められる糖尿病の治療においては、この文化的背景を考慮にいれる必要があると考え、内田特定准教授らとともに、日本人糖尿病患者とアメリカ人糖尿病患者に対し、協調性、周囲の人との心のつながり、糖尿病の心の負担を調査し、相互の関連を検討しました。

     その結果、協調性が高いとされる社会で生活する日本人糖尿病患者では、協調性の高い人ほど糖尿病の負担を強く感じており、周囲との心のつながりが強い人では負担が軽減していました。糖尿病の分野ではこれまで、社会や個人の協調性に関する議論はなされていませんでしたが、今回、文化・社会心理学との融合研究によって新たな視点がもたらされました。

    A、B:協調性(横軸)と糖尿病負担感(縦軸)の関係。Aの日本人では協調性を重視する人ほど負担感が強いという関係がありますが、Bのアメリカ人では明らかではありません(r:相関係数、P:統計学的過誤率)、C、D:周囲からの心のサポート(横軸)と糖尿病負担感(縦軸)の関係。Cの日本人ではサポートを強く実感している人ほど負担感が軽減しているという関係がありますが、Dのアメリカ人ではそのような関係がみられません。

    詳しい研究内容について

    糖尿病患者の心の負担に日本人特有の要因の存在 -協調性を重視する文化の影響-

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0109323

    [KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/191008

    Kaori Ikeda, Shimpei Fujimoto, Beth Morling, Shiho Ayano-Takahara, Andrew E. Carroll, Shin-ichi Harashima, Yukiko Uchida, Nobuya Inagaki
    "Social Orientation and Diabetes-Related Distress in Japanese and American Patients with Type 2 Diabetes"
    PLOS ONE Volume 9 Issue 10 e109323 Published: October 15, 2014


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