研究成果

形状と細孔サイズを自在に変える炭素材料の開発 -多孔性3次元グラフェンナノシートの新規合成-


2014年10月17日


     フランクリン・キム 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)助教、ジャンリ・ゾウ 同研究員の研究グループは、形状と細孔サイズを自在に変えることができる多孔性の3次元グラフェンナノシートとその簡便な合成方法の開発に成功しました。

     本研究成果は、2014年10月16日10時(日本時間16日午後6時)に英国オンライン科学誌「Nature Communications」で公開される予定です。

    研究者からのコメント

    左からキム助教、魚谷信夫 iCeMS特任教授

     本研究のポリイオンコンプレックスは、安価なグラファイトからつくられる酸化グラフェンと接着剤、インク、塗料、製紙、水処理などに大量に工業利用されている分岐タイプのポリエチレンイミンを原料としてつくることができるので、低コストで製造することができるメリットがあります。製造方法はシンプルで、酸化グラフェンの分散液と分岐ポリエチレンイミンの溶液を混ぜるだけです。生成したポリイオンコンプレックスは3次元の多孔性多層構造体であり、その細孔のサイズは自在に変えることができ、またその形状もフィルム状、塊状と自由に成形することができます。熱処理後はグラフェンと同等のシート抵抗を有しています。

     このように従来の2次元多孔性グラフェンナノシートにない特長を有していることから、今後ますます重要になってくる、バッテリー、燃料電池、 キャパシターなどのエネルギーを貯蔵する材料として重要な役割を果たしていくものと考えられます。安価な原料、簡便な製法、制御できる細孔のサイズ、自由度の高い成形性、優れた電気特性をもつ新しい3次元多孔性グラフェンナノシートは、今後情報化社会に大きなインパクトを与えるものと期待されます。

    概要

     情報化社会の発展に伴って、携帯端末、ウエアラブルデバイスなど小型の機器が普及し始めています。機器が小型になるのにともなって体積当たりのエネルギーの量や出力の大きいものが求められています。グラフェンはバッテリー、燃料電池、キャパシターなどのエネルギーを貯蔵する材料として注目されており、現在電極材料として一部で使用されていますが、表面積の小さい2次元シートのためにその使用範囲が制限されています。

     また、これまでに気相で成長させる方法(CVD)や酸化グラフェンを溶液に分散させてから塗布する方法などいくつかのつくり方が提案されてきましたが、いずれの方法も用途に応じた形状にしたり、細孔のサイズを変えたりすることが容易ではなく、また2次元であるために表面積の大きいシートをつくることが困難でした。

     今回の研究では、陰イオンをもつ酸化グラフェンと陽イオンをもつポリエチレンイミンというポリマーが電気的に引き合って、ポリイオンコンプレックスという複合体を形成する性質を利用しました。その複合体のなかで、陽イオンをもつポリエチレンイミンが陰イオンをもつ酸化グラフェンに拡散しながら、多孔性の酸化グラフェン積層膜をつくるという全く新しい方法を見出しました。この現象を利用して、シート状や塊状などさまざまな形状の3次元多孔性グラフェンナノシートの合成に成功しました。

     本成果により、これまで不可能であった任意の形状をもつ積層膜や細孔サイズを自由に変えることができる3次元シートをつくることができるようになりました。さらに熱処理により高い電気伝導性が発現されました。本来多孔性グラフェンナノシートがもつ電気特性、柔軟性や機械的強度を生かし、電気二重層キャパシターやリチウムイオン電池の陰極、吸着材、センサーなどへの応用により、社会に大きなインパクトを与えることが期待されます。

    図:GOとb-PEIによって形成された多層構造体の細孔

    詳しい研究内容についてhttp://hdl.handle.net/2433/191018

    形状と細孔サイズを自在に変える炭素材料の開発 -多孔性3次元グラフェンナノシートの新規合成-

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1038/ncomms6254

    [KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/191018

    Jianli Zou & Franklin Kim
    "Diffusion driven layer-by-layer assembly of graphene oxide nanosheets into porous three-dimensional macrostructures"
    Nature Communications 5: 5254 Published 16 Oct 2014

    掲載情報

    • 日刊工業新聞(10月17日 19面)および読売新聞(12月1日 15面)に掲載されました。

    形状と細孔サイズを自在に変える炭素材料の開発 -多孔性3次元グラフェンナノシートの新規合成-
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