研究成果

水素吸蔵特性をもつAg-Rh合金ナノ粒子の電子構造の初観測 -Ag-Rh合金ナノ粒子がPdと同様の特性を有する謎の解明を目指して-


2014年10月17日


     北川宏 理学研究科教授と、坂田修身 独立行政法人物質・材料研究機構中核機能部門 高輝度放射光ステーション長、古山通久 九州大学稲盛フロンティア研究センター教授からなる研究チームは、バルクでは合金にならず、また各々単独では水素吸蔵金属でもない銀-ロジウム(Ag-Rh)合金ナノ粒子が、なぜパラジウム(Pd)のように水素吸蔵特性を示すかを調べるため、その電子構造を初めて観測しました。現代の錬金術と称される元素間融合を用いた新機能性物質の創製をますます促進することが期待される研究成果です。

     本研究成果は、「Applied Physics Letters」誌の2014年10月16日発行号に掲載される予定です。

    研究者からのコメント

    北川教授

     銀ロジウム合金がパラジウムと似た性質を示すことを私たちの研究グループが発見してから数年経ちます。今回、物質・材料研究機構と九州大学との共同研究(科学技術振興機構のCREST研究)により、その原因を解明することが出来ました。放射光科学、理論化学、合成化学とのコラボレーションです。私1人では成し得ない成果であり、研究シンパの大切さを改めて感じています。

     今回得られた指導原理をベースに、今後ますますの共同研究の推進により、元素の有効活用を目指します。

    概要

     元素の周期表中でPdの両隣りにあるRhとAgは、それぞれ水素を吸蔵する能力を持っていません。バルクでは合金になり得ないAg-Rhは10数ナノメートルの大きさにして初めて合金化することができ、AgとRhが1:1のAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子はPdと同様に水素を吸蔵します。しかし、なぜ、このような驚きの特性をAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子がもつかは謎でした。その謎を解明するため、水素吸蔵特性と密接に関係するとされる電子構造を実験的、理論的に解明することは、材料開発の基礎として重要です。

     そこで本共同研究チームは、 Ag-Rh合金ナノ粒子の価電子帯の電子構造を高輝度放射光の高分解能光電子分光測定、および理論計算により調べました。直径10数ナノメートル粒子の内部の電子構造を実験室のエネルギーの低い(軟)X線を使った光電子分光測定で調べるのは大変難しいため、大型放射光施設(SPring-8)にあるNIMSビームラインでエネルギーの高い(硬)X線を用いました。また、電子系のエネルギーの計算スペクトルから、実験結果を精密に解釈しました。その結果、Ag-Rh合金ナノ粒子は、AgとRhが微視的に分離した混合物ではなく原子レベルで混成しており、その電子構造はPdの電子構造と極めて類似していることがわかりました。Ag -Rh合金ナノ粒子に水素が吸蔵されるという事実は、この電子構造の類似性と関係していると考えられます。

     本研究成果から、Ag-Rh合金ナノ粒子は、その電子構造の観点からPdと同様に水素吸蔵のみならず、有用な触媒となる可能性も示唆されます。今後、その性質と物性などに関して共同研究を進めて行く一方、本合金ナノ粒子の他、さまざまな新機能性物質が産業に展開できるよう、電子構造や原子配列に関するデータを提供し、データを活用した設計型物質・材料研究(マテリアルズ・インフォマティクス)の基盤を形成していきます。


    図:Pdナノ粒子とAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子の高輝度放射光光電子分光スペクトルの比較

    (a)0-15eVの結合エネルギーの範囲におけるAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子(赤破線)とPdナノ粒子(黒実線)の高輝度放射光分光による価電子帯スペクトル。Ag0.5Rh0.5合金の強度はPdの約半分。(b)0-3.5eVの結合エネルギーの範囲を拡大したAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子(赤破線:強度をPdに合わせて拡大)とPdナノ粒子(黒実線)の価電子帯スペクトル。青い点線は、Ag0.5Rh0.5合金ナノ粒子の拡大されたスペクトル、Pdナノ粒子のスペクトルとの差異を示しています。EFはフェルミエネルギー

    詳しい研究内容について

    水素吸蔵特性をもつAg-Rh合金ナノ粒子の電子構造の初観測 -Ag-Rh合金ナノ粒子がPdと同様の特性を有する謎の解明を目指して-

    書誌情報

    [DOI] http://dx.doi.org/10.1063/1.4896857

    Anli Yang, Osami Sakata, Kohei Kusada, Tomoe Yayama, Hideki Yoshikawa, Takayoshi Ishimoto, Michihisa Koyama, Hirokazu Kobayashi, and Hiroshi Kitagawa
    "The valence band structure of AgxRh1–x alloy nanoparticles"
    Applied Physics Letters 105, 153109 (2014)

    掲載情報

    • 日刊工業新聞(10月20日 22面)、日刊産業新聞(10月17日 11面)および鉄鋼新聞(10月17日 5面)に掲載されました。

    水素吸蔵特性をもつAg-Rh合金ナノ粒子の電子構造の初観測 -Ag-Rh合金ナノ粒子がPdと同様の特性を有する謎の解明を目指して-
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