研究成果

ワット級高出力フォトニック結晶レーザーを世界に先駆けて実現 -世界初、面発光型レーザーにより高ビーム品質でワット級の高出力化を達成-


2014年04月14日

  • 理工

2014年4月14日

 野田進 工学研究科教授(工学研究科光・電子理工学教育研究センター長)と浜松ホトニクス株式会社らのグループは、次世代型半導体レーザー光源とも言うべき、フォトニック結晶レーザー素子の開発を進め、狭放射角(3度以内)を維持したまま、光出力1.5ワットというワット級の室温連続動作に世界で初めて成功しました。さらに、このレーザーを用いたレンズフリーでの直接照射による燃焼デモンストレーションなど、高輝度・高出力動作の有用性を実証しました。このような高ビーム品質かつワット級動作の実現は、ものづくり日本を支える光製造への応用に向けた重要な礎となる成果であるとともに、波長変換、光励起、バイオ、分析などの幅広い分野へも応用の裾野が広がる成果と言えます。

 本研究成果は、英国の学術誌「Nature Photonics」誌の電子版に4月14日(日本時間)に出版され、誌上では5月号に掲載されます。

研究者からのコメント

左から野田教授、廣瀬和義 浜松ホトニクス株式会社中央研究所材料センター材料研究室員

 今回のフォトニック結晶レーザーのワット級光出力の実現は、直接レーザー加工をはじめとした光製造分野応用への礎となる研究成果であると考えられます。今後、本研究結果を基にしたさらなる高出力化により、物質改質、溶接応用、3次元光造形などが可能となり、究極的には、車体用の金属加工などの広範なものづくり現場への応用展開が可能になると考えられます。

 フォトニック結晶レーザーには、光製造分野以外にも、ディスプレイに用いられる波長変換用基本波光源、バイオ・医療・分析分野に用いられる高解像度レー ザー顕微鏡等の多くの応用が考えられます。同時に、狭放射ビームを活かしたレンズフリーの応用可能性も現れ、省コスト、高安定化につながります。フォトニック結晶レーザーはさまざまな分野への波及効果をもたらすと考えられ、半導体レーザーそのものにも大きな革命をもたらすことが期待されます。

概要

 半導体レーザーは、これまで、波長域の拡大や高速化といった、波長軸、時間軸での性能向上により、特に情報通信・光記憶分野において広く使われ、社会に大きく貢献してきました。今後の光技術は、情報通信や光記憶のみならず、製造技術(ものづくり)、医療技術・生命科学への展開が期待されますが、このような応用においては、従来の半導体レーザーでは十分になされていないパワー(光出力)を軸とした研究開発が肝要です。特に、材料加工(3次元加工含む)を含むレーザーを用いた製造技術、すなわち光製造の需要は極めて大きいと言えます。

 1999年に、野田教授のグループは、フォトニック結晶と呼ばれる人工的な光ナノ構造を用いることで、ビーム品質の劣化を最小限に抑え、半導体レーザーの高出力化が可能になりうるという基本概念を提案するとともに、その基本実証に成功し、新たな可能性・機能性を次々と実現してきました。この間、多くの企業との産学連携研究により、高出力で高ビーム品質、単一スペクトル、高機能性を同時に実現する、「フォトニック結晶レーザー」の具現化と実用化に向けた取り組みを積極的に進めてきました。

 その中でも、本学と浜松ホトニクスは、2007年度より実用化を見据えたフォトニック結晶レーザーの連携開発に取り組んで来ました。その結果として、光出力200mW(0.2W)のフォトニック結晶レーザーの実用化が間もなく始まることを発表しました。

 今回、デバイス構造および作製のさらなる高度化を推進することにより、ワット級の光出力をもつフォトニック結晶レーザーの実現に、世界に先駆けて成功しました。本研究成果では、光出力が1.5W(CW(2))で、ビーム広がり角が3度以内という優れたレーザー特性を達成し、レンズフリーによる集光なしの直接照射により紙の燃焼のデモンストレーションが出来るまでの高密度動作に成功しました。

図:フォトニック結晶レーザーの技術応用

フォトニック結晶レーザーの応用は、光製造以外においても波長変換、光励起、バイオ・分析など、さまざまな分野への波及効果が考えられます。

詳しい研究内容について

ワット級高出力フォトニック結晶レーザーを世界に先駆けて実現 -世界初、面発光型レーザーにより高ビーム品質でワット級の高出力化を達成-

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/nphoton.2014.75

Kazuyoshi Hirose, Yong Liang, Yoshitaka Kurosaka, Akiyoshi Watanabe, Takahiro Sugiyama and Susumu Noda
"Watt-class high-power, high-beam-quality photonic-crystal lasers"
Nature Photonics Published online 13 April 2014

掲載情報

  • 朝日新聞(5月1日 23面)、京都新聞(4月15日 31面)、中日新聞(4月15日東海版 11面)、日刊工業新聞(4月15日 21面)、日本経済新聞(4月22日 14面)および科学新聞(4月25日 4面)に掲載されました。

ワット級高出力フォトニック結晶レーザーを世界に先駆けて実現 -世界初、面発光型レーザーにより高ビーム品質でワット級の高出力化を達成-
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