海外駐在員のバウンダリー・スパニング活動は両刃の剣

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 多国籍企業本社から海外子会社に派遣された海外駐在員が行う公式もしくは非公式な活動として「バウンダリー・スパニング」があります。これは、海外駐在員が、本社―海外子会社間や海外子会社内での異文化境界を跨いで業務、文化、言語などの橋渡しを行う活動です。従来の国際ビジネス研究では、海外駐在員のバウンダリー・スパニング活動が多国籍企業経営に与えるポジティブな側面のみが強調されてきました。しかし、Liu Ting 経営管理研究部准教授、関口倫紀 同教授、Qin Jiayin 経済学研究科ジュニアリサーチャーらの国際研究チームは、中国の多国籍企業の海外子会社における海外駐在員と現地従業員とのマッチング・データを分析し、海外駐在員のバウンダリー・スパニング活動にはポジティブな効果のみならずネガティブな効果もあるという「両刃の剣効果」を示しました。具体的には、海外駐在員のバウンダリー・スパニング活動は、海外駐在員と現地従業員との相互信頼の醸成によって多国籍企業としての一体感を高める効果がある一方、海外駐在員が担う特殊な役割に起因するストレスや感情的疲労によって現地従業員集団から孤立する可能性があることが明らかになりました。

 本研究成果は、2024年4月15日に、国際学術誌「Journal of International Business Studies」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「多国籍企業が本国から現地に駐在員を派遣することで海外子会社の運営を行っていく際には、海外駐在員によるバウンダリー・スパニング活動が生み出すポジティブな側面のみに注目するのではなく、それがもたらすネガティブな側面についても十分に理解することが必要です。本研究は、多国籍企業がグローバルな経営を成功させるためには、海外駐在員によるバウンダリー・スパニング活動によるポジティブな効果を最大限に引き出すとともに、ネガティブな効果を最小限に抑えるようなマネジメントが求められることを実証データの分析によるエビデンスを用いて示しました。」