量子もつれの伝達速度限界を解明-ボーズ粒子系における新たな理論的発見と量子計算への応用-

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 齊藤圭司 理学研究科教授、桑原知剛 理化学研究所チームリーダー、ヴー・バンタン 同特別研究員の共同研究チームは、相互作用するボーズ粒子系において量子もつれが伝達する速度の限界を理論的に解明しました。本研究成果は、多数のボーズ粒子が相互に作用することで生じる量子力学的な動きを理解する上で新しい洞察を提供すると同時に、量子コンピュータを含む情報処理技術における根本的な制約を解明することにも寄与すると期待されます。

 量子力学で現れる最も基本的な粒子であるボーズ粒子が相互作用を通じてどのくらいの速さで量子的な情報を伝達できるのか、という問題は長年未解決でした。共同研究チームはリーブ・ロビンソン限界と呼ばれる概念を考察し、情報伝達速度の持つ限界を理論的に解明しました。その結果、もう一つの基本粒子であるフェルミ粒子と異なり、ボーズ粒子は情報伝達の加速という現象を起こすことを明らかにしました。この結果を用いて、相互作用するボーズ粒子を量子コンピュータ上でシミュレートする精度保証付きの手法を新たに開発しました。

 本研究成果は、2024年3月21日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

量子もつれの伝達速度限界を解明-ボーズ粒子系における新たな理論的発見と量子計算への応用-
加速する量子情報伝達のイメージ図
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